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ALL THE MONEY IN THE WORLD

ハリウッドを震撼させている大物プロデューサーのハーベイ・ワインスタインから始まったセクハラ疑惑。その余波は名優ケビン・スペイシーに及び、ゲイのカミング・アウトからついには若き頃(なんと31年前!)の少年へのセクハラ未遂の告発事件にまで発展し、すでに撮影を終えていたリドリー・スコット監督の新作「オール・ザ・マネー・イン・ザ・ワールド[邦題未定](All the Money in the World)」で演じていた実在した世界一の大富豪の石油王・ジャン・ポール・ゲティ役を全編カット、差し替えられる憂き目に。そんな曰く付きの映画だが、完璧主義者のリドリー・スコットらしく、代役クリストファー・プラマーで撮り直し、当初の予定通り公開にこぎつけた。

1973年実際に起こったジャン・ポール・ゲティ(以下ジャン)の孫、ジョン・ポール・ゲティ三世(以下ジョン・ポール三世)の誘拐事件。

当時、家業である石油ビジネスのイタリア支部を任されていた父親の関係で、幼少期をローマで過ごしていたジョン・ポール三世は、所謂お金持ちの不良息子で放蕩三昧の生活を送っていた。

そんなある日、16歳のジョン・ポール三世は突如消え失せ、1700万ドルの身代金要求が。当初はドラ息子の狂言芝居だと一笑に付されていたが、その後、第二の脅迫状が届き、父親は支払いをジャン・ポールに泣きつくが拒否される。そうこうするうちに、ジョン・ポール三世の片耳と毛髪の入った新たな脅迫状が届き、身代金は320万ドルまで下げられたが、更に値切ろうとするジャン。挙句の果てに、所得控除の範囲内の220万ドルのみ支払い、残りは息子に金利4%で貸し付けるという珍事に出た!

身代金をめぐるドタバタ交渉劇の末、奇跡的にジョン・ポール三世は救出されたが、18歳で父親となり、アルコールと薬物の依存症で若くして頸椎損傷、視力をほぼ失い、重度障害者として54歳で永眠した。

5度の結婚と数多ある愛人たちから次々と子供を設けた大富豪のジャンだったが、会社の運営を任された長男はストレスから自殺、三男は薬物中毒、彼の2番目の妻はヘロイン過剰摂取により死亡、五男は12歳で脳腫瘍のため夭逝、孫は不摂生がたたりエイズに罹患したり原因不明の死亡を遂げたりと、巨大な富を手にしながら、幸せとは何たるかを考えさせられる。

最後にセクハラは許されることではないが、怪優ケビン・スペイシーはまさに世紀の変人吝嗇大富豪のジャン・ポール・ゲティにはまり役。彼の怪演を観ることができず残念…。

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.94(2018年1月号)」に掲載されたものです。

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