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HAPPY END

ミヒャエル・ハネケ監督待望の新作

ここ最近、ほぼ独占の感もある大手Hoytsでは映画料金終日$11を打ち出し、貧しい映画好きには朗報だが、ニュージーランド映画事情の不満と言えば、どこもかしこも代わり映えのしないハリウッド映画ばかり。日本(ただし都会のみ・・)のミニシアターで上映される、量より質のヨーロッパ映画には、残念ながらほとんどお目にかかることが出来ない。しかし、ニュージーランドのミニシアターもやる時はやる!

待望のミヒャエル・ハネケ監督の新作「ハッピーエンド(Happy End)」が銀幕に登場。「ハッピーエンド」とはお気楽なタイトルだが、そうは問屋が卸さない、ハネケ監督作品がハッピーエンドであるはずがない。監督自身が、「“良い”映画ではなく“不快”な映画をつくる」と言い切ったこの作品も例に漏れることなく、人間の愚かさや醜さを余すことなく克明に描き出している。「愛・アムール」でも父娘を演じた。ジャン=ルイ・トランティニャンとイザベル・ユペールが再結集、難民が多く暮らすフランスの港町カレーを舞台に、不倫や裏切りなどそれぞれに秘密を抱えながら、壊れていく現代の家族の物語を紡ぐ。

ハネケ監督作品の常連で、フランスを代表する大女優ながら、地味で人目を惹く美女でもなく、どちらかというと質素で薄い感じのイザベル・ユペールだが、この人は本当にすごい!豪華さは微塵もなく、本当に薄―いのだが、映画が終わってもなぜかその印象は消え失せることなく、その存在感は重みを増していくのだ。忘れもしない、私が最初に観たハネケ作品「ピアニスト」で、過干渉な母親の監視の下、精神的に自立できず倒錯した性的趣向をもつ、ハイミスのウィーンの名門音楽院のピアノ教師が、彼女に対し熱烈に求愛を送る若い学生ワルターとの出会いで、徐々に精神のバランスを崩し、エンディングでは自分の胸に自らナイフを突き立て、明るい通りを何知らず顔で歩き去る。ハリウッドお決まりの、勧善懲悪、ハッピーエンドにちょっと倦み疲れている精神状態のいい貴方、是非、ハネケ監督作品に挑戦してほしい。

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.96(2018年3月号)」に掲載されたものです。

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