日本は四季に恵まれた国です。春には桜を愛で、夏には瑞々しい緑を、秋の紅葉、冬景色を楽しみ、一年中各々の季節の恵みを感じることが出来ます。 茶道では色々な場面に季節感を取り入れ、お抹茶を頂くお茶碗や、床の間に飾るお花や掛け軸に表わします。
春は花、夏ほととぎす、秋は月、冬雪さえて、すずしかりけり (道元禅師)
意訳 春は桜の花、夏のほととぎす、秋の月、冬は雪がつめたく冴え、
四季はおのずと巡る。思えばなんと清々しいことか
これは、茶道の精神と深い関わりのある禅宗の僧、 道元禅師の題詠十首の一首「本来面目」です。日本ならではの四季の恵みを列挙しながら、自然と人間のありのままの姿を示唆する名歌です。かの文豪 川端康成は一九六八年ストックホルムで行われたノーベル文学賞の受賞後、『美しい日本の私 ~その序説』という演題で行われた講演での冒頭にこの和歌を詠み、「自然との合一ということこそが日本人の精神伝統の根本である」と述べました。
茶道の中では、何度もお辞儀をします。亭主はもてなす側として、お部屋を整え、季節の花や書を飾り、美味しいお抹茶とお菓子で客人をお迎えします。そのような亭主の心に触れれば、亭主の温かい心遣いに、素晴らしい時間を共有する相客に、そして季節の恵みに対して、自ずと感謝の念が湧いてきて、心を込めたお辞儀に導かれるような気がします。
桜樹庵 庵主 松本陽甫:2012年よりChristchurch Avonheadにて茶道教室(表千家)主宰。季節の移ろいに心を寄せ、一服のお抹茶に心を伝える。月に2回のお稽古を通して、美しい所作を身に付け、日本の心を学びます。お問い合わせは、oujuan_nz@yahoo.co.jp 021-130-9619
この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.92(2017年11月号)」に掲載されたものです。