老後と住まい(前編)

 

考えていますか、

老後の住まいのこと。

長く住んだ愛着のある家は、単に居住空間としての存在だけでなく、地域との関わりや長い年月をかけて築いた人間関係など、お金では買えない財産です。しかし年を重ねるにつれ、家の掃除や買い物が不便になったり、介護が必要になる確率も高くなります。そして住み替えや日本への帰国を検討する人が多いのも事実です。老後の住まい、その選択肢について考えてみませんか。

 

海外在留日本人数は130万人以上(2015年度統計)。日本人が海外に住むのは、もはや特別なことではありません。2017年10月時点でニュージーランドにおける日本人永住者数は1万人を超えており、ニュージーランドは日本人永住者が9番目に多い国という統計が出ています(Annual Report of Statistics on Japanese Nationals Overseas)。もちろん、

永住者=生涯その国に住み続ける

という訳ではありませんが、さまざまな理由で老後もニュージーランドで暮らすという選択をされる人も少なくありません。日本で高齢化問題が取り上げられるようになって久しいですが、ここニュージーランドでも、シルバー世代の仲間入りをする日本人永住者も増えてきています。いざ「ニュージーランドでリタイアする」と決めた時、この国での老後の暮らし方には、どのようなオプションがあるのでしょうか。KIWI TIMEでは「生涯をニュージーランドで暮らす」と決められた方、あるいは迷われている方と、情報共有できればと考えています。


◆老後を自宅で暮らす

自由度の高い住まいで過ごすことができるのが、大きなメリット。健康で、日常生活の判断や自己管理ができるなどが必要である。その他にも、住宅内の段差やヒートショックに対する安全対策、緊急通報システムなどの設備を整えたり、食材の購入は大手スーパーマーケットのデリバリーサービスを利用するなどし、介護が必要になった場合は、在宅ケアを利用する形をとる。

◇現在の自宅に住み続ける

バリアフリーにするなどリフォームを行い、自宅に住み続ける

◇転居して暮らす

買い物や病院が近いなど居住環境が便利でコンパクトなアパートメントなどに住み替える

◇共同で生活する

年齢や男女別など住む家で異なるが、複数で暮らす事で、孤独を感じにくい

◇「キャンピングカー」で移動しながら暮らすというのも、ニュージーランドならではの老後の暮らし方。住宅などの不動産を所有している場合、年齢と共に売却する体力や判断能力が低下してくるので、元気なうちから考えておこう。

 

◆もし、自宅での生活に支障が出てきた場合◇

在宅ケアでは入浴、着替え、食事の準備や食べる時の介助、洗濯、生活必需品の買い物の付き添い、といった日常生活の介助や支援が受けられる。NASC(Needs Assessment and Service Coordination)の査定を受け、よく話し合いプランを作成すると良い。芝刈りやガーデニングなど別途料金が必要なサービスについては、Work&Incomeの制度を利用すれば補助が受けられることもある。

参考:Ministry of Health(www.health.govt.nz


<インタビュー>

「共同生活の可能性を探って」

2012年5月に発足した会、「だんらん」。

発起人の安藤氏にお話を伺った。

 

全ての人が、必ず1人になる

「私もですが、全ての人が年を重ねていき、夫婦であっても、必ず1人になってしまいます。その時に『どうやったら生活していけるのか?』と考えたんですね。共同で生活できないか、言葉が通じあう日本人だけで集まって、楽しく暮らしていけないかと思って、会を作ったのが始まりです。日本では、1人になって孤独死を迎えていると聞くので、そうならないように手探り状態で始まりました。最初は、介護の専門学校の方や非営利団体の方に協力していただきながら、会の活動を進めていったんです」

共同生活をするためには「場所」の準備や生活費の管理を誰かが行わないといけないなど、課題がある。現在はこれらの課題について話している状況で、まだ共同生活には至っていないという。

 

現在の活動

「100人以上の方にお越しいただきましたが、現在のメンバーは30人前後です。一番高齢のメンバーは87歳で、お1人で暮らされています。毎月1回集まってシェアランチをしたり、お茶を飲んだり、英会話の勉強やレストホームとリタイアメントヴィレッジの見学、TipTopの工場見学など活動内容は様々です。基本的には、皆で「今月は何をしようか」と話してから決めています。毎月会うようにしているので、定期的に会うというつながりができてきたと思っています。会の連絡係りは、年齢の若い方がボランティアでしてくださっています」

 

共同生活とシニアサポート

レストホームでもなく、リタイアメントヴィレッジでもなく、自宅のように共同で生活する場所を建設する費用が集まれば、後は管理運営を非営利団体に依頼したり、運営費用の補助を国に申請したりする事も検討しているという。

「この国では、レストホームとリタイアメントヴィレッジに分かれていますが、日本人向けはありません。インドと中国の方々は、実際に政府からの助成金援助を受けられるようですが、日本人コミュニティーはまだ小さいので少し弱いですね。ただ、共同で生活する為の費用は、利用料金や水道光熱費、食費などを含めても、年金で十分支払える範囲だと考えています。その費用の管理を生活する人以外にお願いできればいいですね。共同で暮らすことに不安がある方は、1週間程度のショートスティで実際に暮らしてみて、体験してもらうのもいいかなと思っています」

若い人同士でもシェアハウスやフラットなどが一般的になっており、ごみの出し方や遅い時間の話し声、階段の上り下りやシャワーの音など、人には迷惑をかけないという常識的な考え方の相違が問題になっている。その点に関して聞いてみた。

 

家族同然の考え方

「暮らしている皆で買い物に行ったり、食事を作ったりしていくのも楽しみの1つだと思っています。家族同然という考え方で、風邪を引いた時とかは必ず自分もそうなると思うから、助け合うという考え方を持ってもらう。家族だったら風邪を引いたから出て行け、とは言えないですよね」

 

世代を超えた交流と社会に開いた活動を

「共同生活の実現はまだ難しいので、その前に自由に集まれる場所を確保したいと思っています。今は1ヶ月に1回集まっているだけですが、その場所に行ったら誰かいるよ、というような場所を設けて、その場所で社会貢献というか、社会に開いた活動をしていきたいです。例えば、壊れた椅子の修理や電気製品の修理なども、無償でできる範囲の修理をするとか。メンバー達は色々なスキルを持っているので、持っているスキルを発揮できる場所や、お互いに協力し合う場所として活用してもらえたらと思います」

会の名称のとおり団欒ができる場所として活動を進めている安藤氏。これからも小さな子ども達や若い人達と世代を超えた交流をしながら、アイディアを貰い、共同生活を実現させたいと締めくくった。

 

◇NOBORU ANDO

安藤のぼる(75歳)

だんらん(年会費10ドル)

https://ja-jp.facebook.com/danran.nz/


 

リタイアメントビレッジに住む

 リタイアメントビレッジ(Retirement Villages )は、健康状態は良好で、介護の必要ないリタイアした年代の人たちが快適かつ機能的に居住する目的で作られた施設。

戸建てもしくはユニットやアパートタイプの住居が高齢者の活発なライフスタイルをサポートする目的で作られており、売店、ATM、診療クリニック、運動器具など生活に必要なツールが敷地内に完備されているため、そのコミュニティ内だけでも十分日常生活を送ることができることから「ビレッジ=村」と呼ばれている。

 ビレッジ内のメンテナンス(芝刈り、外壁や屋根のペンキ塗替え、雨どいの掃除)等は運営会社が行うので、マイホームに住むより負担が少なく、施設もバリアフリーで安全。

 コミュニティ内の共有スペース(ホール、スポーツグランド)では定期的にアクティビティが催され、入居者同士で交流を持ち、信頼関係、友好関係を容易にはぐぐむことができる。多くのリタイアメントビレッジには老人ホームエリアも併設されているので、将来的な面も見据えて入居を選択する人も多い(別料金が必要になることもある)。ケアコールがついている施設もある。

 ビーチのすぐそば、ショッピングモールの横、シティセンターまで徒歩圏内、というように、高齢者の生活やライフスタイルにより多くの彩を添えられる立地条件の施設もある。

賃貸形式購入形式の両方があるが、基本的には自己資本で支払いをすることになっており、公共の補助金が受けられない場合もあるので、契約前に、弁護士や会計士等と十分に話し合っておく必要がある。同時に支払いに対して享受できる権利、できない権利、定期的・非定期的に必要になる追加料金の有無なども確認しておこう。

 マイホームで所有していた家具や電化製品を持ち込むことができる施設もある。ペットも許可が下りれば一緒に入居できる。

 

 

 

例)オセアニアグループの20万ドルの物件の所有権を購入し、8年間住んだ場合のコストと退出時の返金額

出所:オセアニアヘルスグループのリタイアメントビレッジ

Oceania Healthcare (NZ) Limited(www.oceaniahealthcare.co.nz)

 

 

 

 

参考;

◇ニュージーランドリタイアメントビレッジ協会(RVA:The Retirement Villages Association of New Zealand) (www.retirementvillages.org.nz

NZ国内のリタイアメントビレッジを総括している団体。会員になると3年ごとに信頼のおける外部機関に依頼して施設の監査を行い、Retirement Villages Act 2003に提示されている規則にのっとって運営されているかなどを調査している。合格した施設には「認定証」が送られる。また、毎年6月に大きなカンファレンス&展示会が開かれる。

◇ニュージーランド国内大手のリタイアメントビレッジ会社(どの会社も施設の検索ができるようになっている)

 

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.102(2018年9月号)」に掲載されたものです。

投稿者: kjadmin