- 2019年6月24日
自然のことだま(10話)
「春の風は、もうちょっと長生きできるんだぜ」 別の風が、ぼうやの隣に座り「俺は前に生まれたのは春だったんだ」と続けました。 「あら、私は前回は夏だったわ」 […]
「春の風は、もうちょっと長生きできるんだぜ」 別の風が、ぼうやの隣に座り「俺は前に生まれたのは春だったんだ」と続けました。 「あら、私は前回は夏だったわ」 […]
「雨のひと粒ひと粒には あらゆる感情が すべて入っているんだよ。 嬉しさも楽しさも 寂しさも切なさも 恋しさも愛おしさも 嫉妬も怒りも 乞いもゆるし […]
ある秋、くるみの木は、こう言いました。 「秋は、みなさん、寂しそうですね」 私は、「そうですか?」と、ウトウトしかけた首を起こしてくるみのほうを向きました。 […]
その人は、毎日のように私の前にやって来ました。 暑い日には、私の枝に葉に、水浴びをさせてくれました。 寒い冬は、いつも私の風上に立ってくれました。 その日起 […]
みなさん やはり 季節は ゆくのではないのです 季節は くるのではないのです それは 重なりゆくのです 幾重にも 幾重にも 深く 私は 撒かれた秋をあたため […]
「あかいほうが、いいんだって。あかいのより、もっとあかいのがいいんだって」 まだ白く透き通るような緑色で、どうしたって硬いプラムの子が、泣きそうになって呟い […]
みなさんは、雨粒の声をご存じでしょうか? それは、「未練はあるかい?」です。 台風でも、冬のしとしとと続く雨も、真夏の通り雨も、すべて。そう言って落ちてきま […]
「ないものとあるもの、どっちが多いと思う?」 通りがかりのタカが、数年前、話しかけてきました。 「どっちかな…?」 私は、おてんとうさまに目を向けて、指を折 […]
ある春の終わりのことです。 あの年は、綿毛やら、種やら、私のそばをずいぶんとたくさん通り過ぎていきました。風に乗って、フワフワと飛んでいくのです。ある者は、 […]
またひとめぐり、満月の夜がやってきました。 このあいだの新月の朝、小さな小さな木の芽が、「ようやっと」と言わんばかりの顔で土から顔を出しました。私は、「おは […]