- 2018年12月21日
「数の子は音を食うもの」北大路魯山人(青空文庫より)
お正月になると、大概の人は数の子を食う。私は正月でなくても、好物として、ふだんでもよろこんで食っている。なかなか美味いものだ。 さて、どんな味があるかと言 […]
お正月になると、大概の人は数の子を食う。私は正月でなくても、好物として、ふだんでもよろこんで食っている。なかなか美味いものだ。 さて、どんな味があるかと言 […]
「二郎さん、サンタクロスのお爺さんにお手紙かいて?」 「ぼく知らないや」 「あら、お手紙出さないの。あたしかあさんがね、お手紙だしたわよ。ハーモニカだの、お […]
一、今日の地位に至れる径路 政略と云うようなものがあるかどうだか知らない。漱石君が今の地位は、彼の地位としては、低きに過ぎても高きに過ぎないことは明 […]
桜の樹の下には屍体が埋まっている! これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが […]
いつからともなく、どこからともなく、秋が来た。ことしは秋も早足で来たらしい。 昼はつくつくぼうし、夜はがちゃがちゃがうるさいほど鳴き立てていたが、それらもい […]
一 小説はあらゆる文芸中、最も非芸術的なるものと心得べし。文芸中の文芸は詩あるのみ。即ち小説は小説中の詩により、文芸の中に列するに過ぎず。従つて歴史乃至伝記 […]
私は越後の新潟市に生れたが、新潟市に限らず、雪国の町は非常に暗い、秋がきて時雨が落葉を叩きはじめる頃から長い冬が漸く終つて春が訪れるまで、太陽を見ることが […]
(最終章を抜粋) この間何かの雑誌か新聞で英吉利イギリスのお婆さんたちが愚痴をこぼしている記事を読んだら、自分たちが若い時分には年寄りを大切にして労いたわっ […]
くるしさは、忍従の夜。あきらめの朝。この世とは、あきらめの努めか。わびしさの堪えか。わかさ、かくて、日に虫食われゆき、仕合せも、陋巷ろうこうの内に、見つけ […]
(十夜のうち第一夜) こんな夢を見た。腕組をして枕元に坐すわっていると、仰向あおむきに寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭り […]