「クリスマスの贈物」竹久夢二(青空文庫より)

「二郎さん、サンタクロスのお爺さんにお手紙かいて?」

「ぼく知らないや」

「あら、お手紙出さないの。あたしかあさんがね、お手紙だしたわよ。ハーモニカだの、お人形だの、リボンだの、ナイフだの、人形だの、持ってきて下さいって出したわ」

「お爺さんが、持ってきてくれるの?」

「あら、二郎さん知らないの」

「どこのお爺さん?」

「サンタクロスのお爺さんだわ」

「サンタクロスのお爺さんて、どこのお爺さん?」

「天からくるんだわ。クリスマスの晩にくるのよ」

「ぼくんとこは来ないや」

「あら、どうして? じゃきっと煙突がないからだわ。でも、かあさんいったわ、煙突のないとこは天窓からくるって」

「ほう、じゃくるかなあ、何もってくる?」

「なんでもよ」

「ピストルでも?」

「ピストルでもサーベルでも」

「じゃ、ぼく手紙をかこうや」

 二郎さんは、大急ぎで家へ飛んで帰りました。二郎さんの綿入をぬっていらした母さんにいいました。

「サンタクロスに手紙をかいてよ、かあさん」

「なんですって、この子は」

「ピストルと、靴と、洋服と、ほしいや」

「まあ、何を言っているの」

「みっちゃんとこのかあさんも手紙をかいて、サンタクロスにやったって、人形だの、リボンだの、ハーモニカだの、ねえかあさん、ぼく、ピストルとサーベルと、ね……」

「それはね二郎さん、お隣のお家には煙突があるからサンタクロスのお爺さんが来るのです」

「でもいったよ、みっちゃんのかあさんがね、煙突がないとこは天窓がいいんだって」

「まあ。それじゃお手紙をかいてみましょうね。坊や」

「嬉しいな。ぼくピストルにラッパもほしいや」

「そんなにたくさん、よくばる子には、下さらないかも知れませんよ」

「だってぼく、ラッパもほしいんだもの」

「でもね、サンタクロスのお爺様は、世界中の子供に贈物をなさるんだから、一人の子供が欲ばったら貰えない子供ができると悪いでしょう」

「じゃあぼく一つでいいや、ラッパ。ねえかあさん」

「そうそう二郎さんは好い子ね」

「赤い房のついたラッパよ、かあさん」

「えエえエ、赤い房のついたのをね」

「うれしいな」

 クリスマスの夜があけて、眼をさますと、二郎さんの枕もとには、立派な黄色く光って赤い房のついたラッパが、ちゃんと二郎さんを待っていました。二郎さんは大喜びでかあさんを呼びました。

「かあさん、ぼく吹いてみますよ。チッテ、チッテタ、トッテッ、チッチッ、トッテッチ」

 ところが、みっちゃんの方は、朝、目をさまして見ると、リボンと鉛筆とナイフとだけしかありませんでした。

 みっちゃんはストーブの煙突をのぞいて見ましたが、外には何も出てきませんでした。みっちゃんは泣き出しました。いくらたくさん贈物があっても、みっちゃんを喜ばせることが出来ないのでした。みっちゃんはいくらでもほしい子でしたから。(一九二五、九、二五)

底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館 

2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行

底本の親本:「童話 春」研究社

1926(大正15)年12月

入力:noir

校正:noriko saito

2006年7月2日作成

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この記事は、ニュージーランドのビジネス系無料雑誌「KIWI TIME Vol.105(2018年12月号)」に掲載されたものです。

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