自然のことだま(3話)

◆作・題字・イラスト◆ はづき:Instaguram:nzhazuki┃w:malumaluhazuki.com

「ないものとあるもの、どっちが多いと思う?」

通りがかりのタカが、数年前、話しかけてきました。

「どっちかな…?」

私は、おてんとうさまに目を向けて、指を折り始めました。

「数えちゃ、ダメだ。数えたら、ないもののほうが多くなる」

「そうなの?」

「そうさ」

タカは、しばらく、私の周りをぐるぐると回っていましたが、「おっ」と短く言うと一気に急降下し、ネズミを一匹捕まえました。

タカは、しばらくすると、ネズミを食べ終わったのでしょう。私のところへ戻ってきました。

「ないものとあるもの、どっちが多いと思う?」

やはり私は、空を見上げて指を折り始めました。

「数えちゃダメだって。ないもののほうが多くなるぞ」

「ないっていうのは、ダメなことかしら?」

私がまたおてんとうさまを探しながらつぶやいている間に、タカは遠くへと去っていきました。

「ないっていうのは、ダメなことかしら?」

私は今でも時々、七色の陽の光がクルクルと回るのを眺めながらひとりごちます。

この記事は、ニュージーランドのビジネス系無料雑誌「KIWI TIME Vol.105(2018年12月号)」に掲載されたものです。

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