自然のことだま(6話)

みなさん やはり 季節は ゆくのではないのです 季節は くるのではないのです それは 重なりゆくのです 幾重にも 幾重にも 深く 私は 撒かれた秋をあたため 吹かれた秋を吸い込み 落された秋をすくい 塗られた秋をしみ込ま […]

自然のことだま(5話)

「あかいほうが、いいんだって。あかいのより、もっとあかいのがいいんだって」 まだ白く透き通るような緑色で、どうしたって硬いプラムの子が、泣きそうになって呟いていました。 「どうしたの?」サラサラと葉を鳴らして尋ねる私に、 […]

自然のことだま(4話)

みなさんは、雨粒の声をご存じでしょうか? それは、「未練はあるかい?」です。 台風でも、冬のしとしとと続く雨も、真夏の通り雨も、すべて。そう言って落ちてきます。   「何の後悔もなく、思い残すこともなく、生きるのは、無理 […]

自然のことだま(3話)

「ないものとあるもの、どっちが多いと思う?」 通りがかりのタカが、数年前、話しかけてきました。 「どっちかな…?」 私は、おてんとうさまに目を向けて、指を折り始めました。   「数えちゃ、ダメだ。数えたら、ない […]

自然のことだま(2話)

    ある春の終わりのことです。 あの年は、綿毛やら、種やら、私のそばをずいぶんとたくさん通り過ぎていきました。 風に乗って、フワフワと飛んでいくのです。 ある者は、「いいところへ行くんだ」と言いま […]

自然のことだま(1話)

またひとめぐり、満月の夜がやってきました。 このあいだの新月の朝、小さな小さな木の芽が、「ようやっと」と言わんばかりの顔で土から顔を出しました。私は、「おはよう」と笑いかけ、ふっと息を吹きかけて、まだ新芽の頭に残っていた […]

真実の悩み【第11回】

  空は白一面に透き通り、太陽の光が窓から差し込んでいる。先ほどまで上下に揺れていた機体は安定さを取り戻し、まるで海に浮かんでいるかのようにスムーズに進行していた。動揺と奇声が飛び交っていた機内は嘘のように静ま […]

真実の悩み[第10回]

  「真実の悩み」 第10回 「すみません、騒がしくて」 アクセントがない日本人訛りの英語が前方座席から聞こえると、母親らしい女性が後ろ向きになり少しこわばった顔を見せた。 「大丈夫ですよ。日本の方ですか」 問 […]

真実の悩み【第9回】

  第9回 好きな人と一緒に過ごす事を選ぶのか、叶えたい夢に向かって人生を歩むのか。ほとんどの人は、普通に流されるまま学生生活を終え、社会に出てからは、自分自身で行き先を決めていく。すぐに結婚して家庭を持つ人は […]

真実の悩み【第8回】

「真実の悩み」   第8回 もうニュージーランドに住んで七年になる。 どうして日本から海外に移住してきたのか、すぐには思い出せない。子育てに追われる生活で、思い返せる時間も、考えられる心の余裕もなかった。実際何 […]