フェミニズムという言葉は好きではないし「#Mee Too運動」に追随するつもりはないが、これだけ豪華なオール女性キャストがそろうとそれだけで圧巻の「オーシャンズ8（Ocean’s Eight）」。ジョージ・クルーニー演じるダニエル・“ダニー”・オーシャン率いる強盗チーム「オーシャンズ」の番外編で、今回はダニーの妹、サンドラ・ブロック演じるデビー・オーシャンが仮釈放されるところから、物語の幕は上がる。何だか見た冒頭の展開。そう、「オーシャンズ11」のダニーを踏襲したかのように、デビーは反省の弁を述べ、「これからは、まじめに生きる。まじめな仕事をして、友達も作って、地道に生きます。」と宣誓し刑務所から仮釈放されるのだが、その舌の根も乾かぬうちに、強盗チームのメンバーを集め作戦開始。実に5年8カ月12日の刑期の期間中、刑務所のベッドに横たわりながらもひたすら人生最大の強盗計画を練り上げてきたのだ！ターゲットは※METガラで、トップ女優の首元を飾る1億5000万ドル相当のダイヤモンド。選りすぐりの強盗チームのメンバーには、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ヘレナ・ボナム・カーターとアカデミー主演・助演女優賞やゴールデングローブ賞受賞者がひしめき合い、又、飛ぶ鳥を落とす勢いの歌手、リアーナの出演も見もの。更に、『ヴォーグ』誌編集長のアナ・ウィンターはじめ、本物のセレブたちが本人役でカメオ出演も。女性の味方をする訳ではないが、これだけ華々しい舞台での強盗作戦は、味気ない男優陣よりもやはり華麗な女優陣にやってもらわなければ。
尚、悲惨な銃乱射事件が後を絶たないアメリカだが、「オーシャンズ」シリーズでは、ハリウッド映画に定番の銃撃戦をはじめ、銃を使用するシーンや、殺戮シーンは一切使わずに、ストーリーを盛り上げるというモットーを貫いていて、このご時世、尊敬に値する。
※METガラ; ニューヨークのメトロポリタン（MET）美術館の衣装研究所（現 アナ・ウィンター・コスチューム・センター）が毎年主催するガラパーティ。正式名称は、「コスチューム・インスティチュート・ガラ（Costume Institute Gala）」。当施設のための資金集めが目的で、入手困難なチケットはなんと1枚25,000ドルで、大半はファッションブランドが購入し、彼らのゲストとしてセレブたちが招待される。ファッション業界関係者、女優やモデルなど世界中のセレブたちがニューヨークに終結する、まさにモードの祭典。
この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.99（2018年6月号）」に掲載されたものです。