新型コロナウィルス感染症(COVID-19)

2019年12月30日、中国・武漢市にある武漢中心医院の眼科医、李文亮さんが、大流行すると警告のメッセージを送信してから、5か月が過ぎようとしている。世界中で感染が広がり、多くの死者がでている「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)」。感染対策への対応の速さでは、台湾政府が世界的に評価を高めているが、各国や地域ごとで政府判断が異なり、その過程や結果に対して賛否両論がある。今回の特集では、感染対策で政府が下した判断についてまとめてみた。



安倍晋三首相は4月7日、新型コロナウイルス対応の特別処置法に基づく緊急事態宣言を発令した。対象は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県で、5月6日までの1か月間。その後対象地域を全都道府県に拡大し、翌月5月14日には47都道府県のうち39県(8都道府県の北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、京都は除く)の解除を発表した。

政府は、緊急事態宣言は、罰則を伴う外出禁止の措置や都市間の交通の遮断等であり、国外で行われている「ロックダウン(都市封鎖)」のような施策ではない、と何度も説明している。

<集団感染>

大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号から香港で下船した乗客が陽性だったことから、2月3日に横浜港に入港した同大型船の乗員乗客全員に検疫検査を行った。この頃の日本国内では「#がんばれダイヤモンドプリンセス」のタグをつけて、乗船者を応援。2020年5月18日の時点では、検査人数3618名、感染者712名、死亡者13名の集団感染が確認されている。WHOの方針で、多国間を移動する船内での感染であった為、日本国内での感染者数としては計上されていない。5月16日、同大型船は横浜港を出港している。

<緊急事態宣言前日>

4月7日に緊急事態宣言が発令され、外出自粛が求められた。医療機関への通院や食料・医薬品・生活必需品の買い出し、必要な職場への出勤、屋外での運動や散歩などは可能、そして「三つの密、①密閉空間、②密集場所、③密接場面」を避ける、また「休業要請」としてコンビニやスーパーは営業可、飲食店や居酒屋は条件付きで営業可と発表された。この自粛は絶対ではなく、要請、お願いベースであったため、海辺やパチンコ店に出向く人々も多く見られると、ニュースで報じられる。


COVID-19の世界的流行の予兆があった2020年新年1月22日からNZ国内でも感染確認検査は始まっていたが、陽性結果は2月に入っても一件も確認されず、中国やヨーロッパでの現状が遠い世界の出来事のように感じられていた2月の最終日に1人目の感染が確認された。3月に入り感染結果が確認されない日も続いたが、海外渡航者からの帰国者の感染ケースが拡大してきた3月半ばの14日、政府は具体的な制限や指示の発令を出した。

<ロックダウン前日>

3月23日時点で、国レベルでの国家封鎖「ロックダウン」については話には出ていたものの、死者が出ていないこともあり、さすがにまだだろうという空気の中で発令されたこの日の緊急事態宣言。発表が学校の下校時間直前に行われたこともあり、この日がロックダウン前の最後の授業日だとは思っていなかった学校・先生が多かったようだ。アーダン首相はロックダウン開始の際に、今後感染者数は増加していき1000名を超えるだろうが、驚かないでくださいとの旨を発表している。そして繰り返される「ステイ・ホーム」の合言葉。

<レベル3への引き下げ直前、そしてレベル2へ>

4月28日のレベル3への引き下げとともに、テイクアウェイでの持ち帰りが可能になったため、マクドナルドでは開店前からドライブスルーに車の長い列ができた店舗も。NZ定番のフィッシュ&チップスにも多くのキウイが押しかけた。その48時間後のレベル2の引き下げ後では、事実上のロックダウン解除ということで35街の風景だけ見る限りは「日常」が戻ってきたようにも思える。しかし、反対の声も多く聞かれたレベル2期間に限定した警察に捜査行使特権を認める法案が決議されるなど、「決して元に戻ったわけではない。ウィルスはまだそこにいる」と、国民の緩んだ気持ちを引き締める意味ための政府からの隠れたメッセージのようにも思えてくる。



当初は収入が減った低所得世帯に対し、30万円の現金給付として4兆円をあてると発表。経済対策の事業規模は108兆円という大規模な対策で、2009年4月、リーマンショック後に実施した対策の56兆円の約2倍となる。この対策には、まだ実施されていないものも含まれており、さらに後から返済を求める融資金額や支払猶予分までも足されており、負担部分を先送りするだけで、実際に国

が支出する金額は、18兆円となる。これらの財源はすべて国の借金となる国債

の追加発行でまかなう事になる(4月20日、30万円の現金給付を撤回し「全国

民に1人当たり10万円を給付」に方針を変更した)。

<世帯や個人>

給付:全国すべての人に>特別定額給付金>一律1人当たり10万円>

   子育て世帯>臨時特別給付金>子ども1人当たり1万円

   休業による収入減で住居を失うおそれ>住居確保給付金>原則3か月、最長9か月(家賃相当額)

貸付:収入減で生活が苦しい>緊急小口資金・総合支援資金>最大80万円(2人以上世帯)、最大65万円(単身世帯)

猶予・減免:収入減で保険料が払えない>国民健康保険料などの減免>国民健康保険料、介護保険料、国民年金保険料など減免

生活が苦しくて税、公共料金が払えない>納税猶予、公共料金の支払猶予>国税・地方税、電気・ガス・ 電話料金、NHK受信料等 の各種公共料金の支払を猶予

<中小・小規模事業者等>

給付:売上が半分以下で家賃の支払いが苦しい(1~12月のどの月でも)>持続化給付金>中堅・中小・小規模 最大200万円 フリーランス含む個人事業主 最大100万円

助成:雇用を維持できない>雇用調整助成金>休業手当100%で雇用維持なら 中小は都道府県の休業要請を受けた場合 最大10割助成

貸付:売上減で 家賃の支払が苦しいなど資金繰りが厳しい>実質無利子・無担保融資>3年間無利子,最長5年間元本据置 日本政策金融公庫等に加え、 5月より地銀,信金,信組等でも利用可に

猶予・減免:売上減で 税、社会保険料が苦しい>国税、地方税、社会保険料の納付猶予>売上が一定程度減少の場合、 1年間、無担保かつ 延滞税なしで猶予

売上減で 固定資産税が払えない:固定資産税・都市計画税の減免>売上が一定程度減少の場合, 来年度は 2分の1又はゼロに減免


3月に始まった12週間の期間限定の賃金サポートも6月で終了する予定だったが、5月14日、サポート措置は9月1日まで延長されると発表された。

<サポート内容>

サポート受給者になるための資格は以下の通り:

・雇用者、自営業、請負業者、株主、ビジネスパートナーのいずれかに当てはまる者

・前年比で30%減収

・(雇用者の場合)サポート受給期間、雇用継続をしなければならない/従業員に通常賃金で支払うこと/従業員が自宅隔離で勤務時間が減少しても、80%の給与を補償しなければならない

給付金額は一定で、以下の2通り:

・フルタイム・ワーカー:$585.80/週(サポート期間中に週に40時間以上勤務する場合)

・パートタイム・ワーカー:$350.00/週(サポート期間中に週に20時間未満勤務する場合)

給付金は申請制で、認められれば2日間で指定銀行口座に入金される(Work and Incomeと各銀行がCOVID-19サポートのために連携しているため、スムーズに受給可能)。

■他のサポート

Work and Incomeのウェブサイト上で、さまざまな金銭サポートが用意されていることが確認できる。COVID-19に特化したものと、そうでないものがミックスされているが、財政的に厳しい、家庭・個人には以下のサポートを受給することが可能である。

●失業者に対する金銭サポート(金額はケースバイケース)

●求職者サポートは再就職が決まるまで毎週金銭サポートを受けることが可能(金額はケースバイケース)

●緊急時の出費のための支援(以下項目によって、スキームや窓口も異なるため、Work and Incomeのウェブサイトを要確認)

食料品・ホームローン・賃貸コスト・寮食費・電気・ガス費など・歯科(緊急ケースのみ)・眼鏡購入・家電(冷蔵庫、洗濯機)・家の修繕・自動車修理・葬式費用・火災・盗難・教育費(制服や文具、アクティビティーコスト)や孤児へのサポート・他ケースバイケースで


<首相と保健省長官による会見>

アーダン首相とアシュリー・ブルームフィールド保健省長官のコンビによる会見。1月27日に行われたブルームフィールド長官の会見を皮切りに、COVID-19関連の会見が毎午後の恒例となる。やはりその道の専門家がトップになり報道官として会見するというのは、情報量や知識が豊富なことで適任と言える。記者からの質問への即座の具体的な返答、真摯な受け答えなど、会見のたびに好感度・信頼度が高まるのもうなづける。

<「Unite against COVID-19」NZ政府特設ウェブサイト>

3月14日:新型コロナウィルス対策専用ウェブサイト「Unite against COVID-19」をオープンし、政策・対策・各種サポート等あらゆる情報が毎日発信されるようになる。マオリ語、NZ手話、日本語を含めた28ヵ国語で情報とアドバイスが掲載されている。

<「COVID-19」NZ保健省ウェブサイト内特設ページ>

現状のアップデートと健康・医療面に特化したウェブサイトで、1月24日よりスタート。各種データ数値等の確認もできる。

<Facebook上でのアーダン首相による発信>

3月14日:新型コロナウィルス対策専用ウェブサイト「Unite against COVID-19」の開設と同時にFacebookページをオープン、政策・対策等あらゆる情報が毎日発信されるようになる。首相がいかにも「キウイ」的なお母さんとして登場し、親身に視聴者に話しかけ、問いに答える姿を見て受ける安心感というのは、いかにニュージーランドが国として、文化として「家族」「子供」を大事に思っているかを反映しているのではなかろうか。

<NZ PoliceのYouTube動画>

2018-19年、世界的にも話題になったNZ警察による警官募集広告ビデオを覚えている方も多いのではなかろうか。FacebookとYouTubeで視聴できるNZ警察によるCOVID-19関連動画は、かのビデオに詰まったユーモアたっぷりの、それでいて基本的情報がわかりやすく伝わるビデオとなっており、子供にもとても受けがいいようだ。ショートカットヘアのキビキビとして、それでいてどこか少し抜けている感じの女性警官はプロのコメディアンのようだ。


4月13日、SBGソフトバンクグループ(本社:東京都港区)は、2020年3月期決算で営業損益が1.3兆円赤字になる見込みだと発表(5月18日には純損益が過去最大の9616億円の赤字と発表)、続いてトヨタ自動車の営業利益予想は前年度比79.5%の5千億円で、8割減の見通しと発表、そしてアパレル企業のレナウン(本社:東京都江東区)が民事再生法の適用を申請、負債総額は138億円余りと発表するなど、大手企業の利益予想、赤字などが続々と発表されるなか、新しい試みをする企業も増えてきている。外食産業の大戸屋ホールディングス(本社:東京都武蔵野市)が冷凍食品事業に参入、5月20日から都内でスタートし、9月にはインターネットで販売予定。また、アイリスオーヤマ(本社:宮城県仙台市)がドーム型サーモチェック、富士フィルム和光純薬(本社:福岡県福岡市)が遺伝子検査用キットやアビガンの開発を進めるなど、関連事業で業績を上げている企業もある。


<中小企業が抱える問題>

160万人(NZ国内全雇用者の60%)がサポートを受けており、多くは中小規模の事業主である。オークランド商工会議所のマイケル・バーネット氏はNZヘラルド紙に対して、従業員を抱える菓子屋や店舗は、スタッフの給与の他に、賃料が重くのしかかってくるが、貸主も逼迫しているためか、寛容ではないケースが多いという現状を伝え、痛みを分かち合うことの大切を訴えている。

 「NZには50万もの中小企業があり、不況にも倒れない大手企業と同じくらいNZ経済に貢献している」とロックダウンによる中小企業への打撃と経済停滞に憂慮し、政権を批判する国民党のリーダーであるサイモン・ブリッジズ党首は、アメリカ合衆国のトランプ大統領と似たスタンスであるが(世界を見てもでも保守政権では)、アメリカ国民ほど、NZ国内では指示を受けていないようだ。

<ツーリズムとホスピタリティーの未来>

クイーンズタウンへの観光客数は昨年比90%減まで落ち込んでいるという。NZツーリズムへの打撃は大きく、回復への兆しが見えない中、国内旅行エージェントの多くが、海外旅行パッケージ販売から国内旅行へと推移せざるを得ないだろうとの声も聞かれる。カフェやホテルなど、ホスピタリティー業種で働く17万人のうち30%ははすでに失職したとのデータもあり、レベル2に下がっても旅行制限がある限り新たに20%の失職が予測されているという(「Hospitality NZ調査」Stuff記事より)。

<小売業の見通しも明るくない>

Retail NZのグレッグハーフォード氏によれば、ロックダウン中に失職した小売業従事者はわかっているだけで約7千人おり、これは氷山の一角だという。政府のサポートなしでは1万人を超える失業者が出るだろうが、サポートの延長や賃料の補助などで、それを半分に抑えることができるかもしれないと語っている(Stuff記事より)。


<ハンコ文化>

時差出勤や在宅勤務(テレワーク、リモートワーク)を取り入れる企業が増えるも、書類に押印しなければ進まない部署もあり、出勤する人の減少はすぐには見られなかった。このハンコ文化にメスを入れたのが、文具メーカーのシャチハタ(名古屋市)。同社は文書に押印できる電子印鑑「パソコン決裁クラウド」を開始、期限付きの無料と有料とがあり、コスト削減と業務効率化などの働き方改革を推進。

<電子化>

在宅勤務などが進む中、社内社外ともに利用されていたファックスからメールへ、対面からオンライン会議へと移行。


<経営を左右する「エッセンシャル」かそうでないか?>

NZ政府による「Essential work」と「Non-essential work」の明確な区別が、ロックダウンによる感染拡大を防いだのは疑う余地もないが、これは経済停滞と人命を振り子にかけた際のNZ政府の答えであったのだろう。

 Work from home(自宅勤務)が義務付けられ、被雇用者の中でも特にパンデミック影響の少ない業種のオフィス事務系ワーク従事者にはそれほど違和感なく勤務環境変化にも順応できたかもしれない。しかし個人事業者が半数以上のこの国では、多くの人がサポートを受給しながら不安を抱えて毎日を過ごしているのが実情だ。

「人間が生きていくために必要不可欠な労働活動」として食料関連、医療関連、必要物資を運搬する運送、警察・消防・中央政府などが最初に思いつくが、日常生活の中では、スーパーでは手に入らない「これがないと、あるいは壊れたら困る」というものが思いの外多いことに気がつかされる。調理・洗濯に関するものや、電気・水道・インターネットなどの家庭インフラも生活に必要不可欠なものだ。オンラインストアをブラウズすると、ショップの中でも「エッセンシャル」と「ノンエッセンシャル」で購入可否が定められているため、「楽しみとしてのショッピング」は制限されていることが分かる。

<学校教育>

各学校長によって教育方針が異なるNZの学校。小中学校レベルでは、ロックダウン中の実質的な先生は親だ。学校によって親にほとんど任せるという放任的なところもあれば、ロックダウンを見込んで事前にプランを練ってオンラインラーニングを取り入れたところもある。しかし、子供にとって手っ取り早く分からないところを教えてくれる先生は、ママであり、パパだ。

 学校教育以外にも、COVID-19の正しい知識や世界情勢、毎日の規律や健康維持のための活動など、親自身学び、守り、そして子に伝えていくべきことが増えてくるのが、ロックダウンだったと言えそうだ。


アーダン首相が強調し続けた「Stay (at) Home」「Bubble」というキーワード。家族や同居人、学校の寮など同じ場所に一緒に暮らす人たちを「Bubble (バブル)」と呼び、その範囲以外のバブルの人たちとの接触をできるだけしない。この基本概念は広く浸透し、家族ファーストのキウイにしてみると、概して決して受け入れづらいものではなかったようだ。ただし、都市部とそれ以外の地域での住環境は極端に異なるため、息苦しさや、ストレスは多種多様だったであろう。ロックダウンで喜ぶ子供はそれほど多くないかもしれない。屋内で放っておくとテレビかタブレット画面をみ続けているというケースもよく聞かれた。屋外行動は自宅の庭か、散歩あるいは近隣でのサイクリングなど限られる。家族単位での散歩。渋々親についていく子供たちを、少しでも楽しくさせるための窓辺に置かれたテディベアは、ちょっとしたゲーム感覚で受け入れられた。毎日散歩経路を変えてぬいぐるみの数で競ったり、自分でも窓に自身のコレクションをおいたりと。ぬいぐるみの他にも、エッセンシャルワーカーの方々への感謝メッセージが窓辺やフェンスに添えてある家も少なくない。家の前で近所同士の人がおしゃべりをしている姿も見かける。しかし2mのソーシャルディスタンス(WHOが推奨するウィルス飛沫を避けると言われている2mの人-人の物理的距離)によって、その光景は少しシュールに見える。行動範囲が狭まれたため、普段は人の往来も少ない遊歩道が散歩する家族で賑わっていて、かえってソーシャルディスタンスを取ることが困難になるという矛盾が生じたのも事実だ。街の中心地や普段は歩いて通ることもない産業エリアに足を伸ばしてみると、車と人の往来もなく、のんびり歩けるのがうれしい。



この記事は、ニュージーランドのビジネス系無料雑誌「KIWI TIME Vol.122(2020年6月号)」e-book版に掲載されたものです。

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