COVID-19(新型コロナウィルス)続編

2020年7月14日、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は「多くの国が誤った方向に向かっている。基本的な感染防止対策を各国で徹底しなければ、事態はさらに悪化する」と警告。世界の発生状況は同14日時点で、累計感染者数は12,964,809人、死亡者数は570,288人と発表。また、WHOは「新型コロナウイルスがどのように広がったか調べるため」に中国へ専門家2人を派遣、また、「調査が必要な場合は、中国以外の国や地域でも同様の調査を行う」と述べた。

前号に引き続き、ロックダウン、緊急事態宣言後のコロナ禍による経済回復への対策について考察してみたい。ニュージーランドと日本、そして世界各国ではどのような策を講じているのだろうか。


事務所の賃貸料や人件費が払えない、税金が払えない。不景気とは、お金の量は一緒でも、お金の流れが悪くなることを指す。そして不景気になると、会社の倒産が生じることになる。支払いができなくなり銀行で取引停止、資産より借金が増加して事業停止。一般的には、お金がなくなって経営ができなくなること、またそのような恐れのある状態のことを、倒産の状況であるという。

各国のメディアは、多くの企業では材料が手に入らずに工場がストップ、飲食店は休業で収入激減、農業では収穫の人出不足、漁業では出荷することができないなど、あらゆる産業で稼げない状況になっていると報じた。そして実際に起こった経済の悪化に加え、秩序や常識も変容し始めた。個人や企業、そして政府は、今後の変化に試行錯誤しながら、解決策を見出すことができるのだろうか。

国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)の統計より、1980年代以降の世界経済のマイナス成長は、リーマンショック直後2009年の0.1%減だけで、その水準を上回る経済が回復している。大恐慌期の1929〜1932年、当時の先進国経済は約16%減、世界全体では約10%減。プラス成長を予想するも、感染危機が急速に欧米に拡大し、世界中で経済活動全体が滞っている状態だ。

これまでの金融危機と大きく異なるのは、感染対策をとらないといけない為、全力で対策することができない状況である。公共事業を増やしたり、貿易でお金が動いたりして、景気を刺激、経済が回復してきたといわれている(リーマンショックの時に世界を救ったのは、中国との貿易で世界のお金が動いたから、といわれている。金額にして中国4兆元、約60兆円)。今回のコロナショックでは、経済を活発にさせて感染者が増加するという、悪循環を生み、これまでに例のない危機に直面しているといえる。

出典:総務省統計局(https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html, 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/20hosei/02index.html)


人口 500 万人弱に対して年間の外国人来訪者数が約390 万人のニュージーランド。アーダン政権は、早い段階にロックダウンを開始した後、外出制限措置を緩和、それに伴い大半の経済活動が再開される見通しとな った。しかし、観光や教育産業などへの打撃が大きいこと、また、輸出相手国第1位の中国で、中国経済の減速による影響を受けていることなどが指摘されている。

<経済対策と対策内容>

報酬削減:ジャシンダ・アーダン首相は、自身の報酬を2割削減すると発表。通常は年額約47万NZドル(約3000万円)の報酬だが、半年で4万7000NZドル(約300万円)程度を減額。また「これにより政府の財政状況が変わるわけではないが、リーダーシップに関わることだ。多くの国民が今受けている痛みを受け止めていると示すことに他ならない」と語った。

7つのシナリオ:4月14日、ニュージーランド政府は今後の経済予測として、社会的距離制限のレベルや期間などに応じた7つのシナリオを公表。その1つとして、追加の経済支援策を実施することによって、2020年の失業率を10%未満に抑えることができると予測。また、追加の支援策がなく、最も厳しい制限措置が長期間続いた場合のシナリオでは、失業率は最大26%まで悪化するとしている。なお、翌15日には、追加の経済支援策として、中小企業向けの新たな支援策を発表。

政策金利:5/13、NZ中銀は政策金利(Official Cash Rate)を市場の予想通り0.25%に据え置き、債券買い入れ枠を現行の330億NZドルから600億NZドルに拡大させた。

Spot:5月20日、ニュージーランドのロボット操作アプリ会社Rocos(https://blog.rocos.io/)は、ソフトバンクグループ傘下の米ロボットメーカーBoston Dynamicsと提携し、四足歩行ロボット「Spot」のリモート操作の設計と提供を開始したと発表。同社がYouTubeで公開した動画では、Spotが牧羊犬のように羊の群れを管理したり、キウィ果樹園内を動くなど農業や工場などでの活用を見込む。

週4日勤務制:5月22日、アーダーン首相は国内観光を促進し、ワーク・ライフ・バランスを保つための施策として、週4日勤務制や祝日の追加などを提案。ロックダウンの影響で特に打撃を受けた観光やサービス部門での消費活動を支援し経済回復に向けたものである。

賃金助成金(Wage Subsidy):3月に始まった12週間の期間限定の賃金サポートも6月で終了する予定だったが、追加助成金として8週間延長してサポート。

小規模企業向け融資スキーム(Small Business Cashflow(Loan) Scheme):ローン金額$10,000とフルタイムの従業員1人分$1,800として計算、合計$11,800のローン申請をすることが可能。最大のフルタイム50人分で計算すると、$100,000まで申請可能。1年以内に返済した場合は利息を付さないものとしている。返済期限は5年間で利息は3%。IRDのウェブサイト「myIR」からログイン、2020年7月24日まで申請可能。

中小企業向けの融資スキーム(Business Finance Guarantee Scheme):最大$500,000までローン申請をすることが可能。金額は銀行が承認決定し、銀行が20%、政府が80%のリスクを保証することとなる。

建設需要の増加:2021年に開催が予定されている国際ヨットレースのアメリカズカップやAPEC首脳会議などに向け、宿泊施設の建設需要が増加。

COVID対応・復興基金(CRRF:COVID Response and Recovery Fund):5月14日、NZ財務省が発表した2020/2021年度(2020年7月~2021年6月)予算案では、新型コロナウイルスの打撃を受けた経済の力強い回復の実現に向けて、500億NZドル(約3兆2,000億円)の経済支援策を盛り込んだ。3月17日に発表された121億NZドルとあわせて621億ドルになる。用途は賃金補助や事業税軽減措置、設備投資や職業訓練、観光産業などである。

出典:Inland Revenue(https://www.ird.govt.nz/managing-my-tax/penalties-and-interest/interest-on-overpayments-and-underpayments),(https://www.ird.govt.nz/covid-19/business-and-organisations/small-business-cash-flow-loan),Employment New Zealand(https://www.employment.govt.nz/leave-and-holidays/other-types-of-leave/coronavirus-workplace/wage-subsidy/), Business.govt.nz(https://www.business.govt.nz/covid-19/business-finance-guarantee-scheme/), (https://budget.govt.nz/budget/2020/wellbeing/approach/covid-19-response-recovery-fund.htm)


日本国内の7月16日の感染者数は623人。東京都で286人、大阪府で66人、神奈川県で47人など、全国31の自治体と空港検疫の4人で、1日の感染者数としては最も多い数字が発表された。新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、政府の旅行需要喚起策「Go To トラベル」事業が22日から始まることに懸念が高まっている。

<経済対策と対策内容>

海外からの入国制限を緩和:日本政府は現在、111カ国からの入国を拒否、その他の国と地域からの入国者に対しては日本への入国後の14日間の行動制限を求め、全世界を対象とした入国制限の措置をとっているが、タイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国を入国規制緩和。第2弾として中国、韓国、台湾、ブルネイなどと交渉を始める方向で検討に入ったと報じられている。

第2次補正予算:第1次補正予算の約25兆7000億円(全国民を対象にした特別定額給付金10万円、売上が急減した中小企業に最大200万円など)に続き、第2次補正予算の追加額は、4兆9,733億円(うち一般会計 3兆8,507億円、労働保険特別会計 1兆4,446億円)。「感染拡大の抑え込み」と 「社会経済活動の回復」の両立を目指すための対策を強化する。詳細は、検査体制の充実、感染拡大防止とワクチン・治療薬の開発、雇用調整助成金の抜本的拡充をはじめとする生活支援、ウイルスとの長期戦を戦い抜くための医療・福祉の提供体制の確保、ワクチン、治療薬の開発、中小テナントへの家賃支援、生活困窮者等への支援の強化、住まい対策の推進、雇用調整助成金の拡充、ひとり親家庭への臨時特別給付金などである。

GO TOキャンペーン:国内旅行代金の半額相当を付与、一人あたり最大2万円分/泊、日帰り旅行は最大1万円分。7月15日、感染拡大防止の為、東京都を除外することに決定、7月22日からキャンペーンは実施予定。


<日本国内における新型コロナの影響>

観光業に大打撃:観光業界は99.9%減。昨年の訪日外国人旅行消費税額は4兆8135億円。詳細は中国は1兆7704億円(36.8%)、台湾は5517億円(11.5%)、韓国4247億円(8.8%)、香港3525億円(7.3%)、アメリカ3228億円(6.7%)、その他15か国、地域以上(観光庁HPより)。

企業破綻と倒産:東京商工リサーチによると、4月10日時点でコロナの影響で破綻した中小企業は51社、5月5日時点では114社に急増したと発表。6月2日時点では、倒産200件を超える。ホテル、旅館は39社、飲食店25社、アパレル、雑貨、靴小売店16社など。無担保・無利子の融資制度もあるが、経営者も高齢化しており、倒産よりも廃業が増えたおそれもある。

失業率の上昇:5月の完全失業率は2.9%(前月から0.3%上昇)で、3ヶ月連続の悪化。新規の求人数は、宿泊業、飲食サービス業は55.9%減、生活関連サービス業は44.2%減、建設業11.3%減、医療、福祉は17.9%減で、雇用を維持できないほど需要が減っている状況(厚労省HPより)。

消費の大幅減少:総務省家計調査報告では、5月の消費支出は一世帯当たり252,017円、前年同月比では実質16.2%の減少と発表。東証一部上場1428社(5月29日付)、2020年1-3月期の純損益合計約1兆470億円の赤字。


1位:マスク281.8%、2:体温計260.4%、3:殺菌消毒剤258.4%、4:ホイップクリーム251.9%、5:エッセンス類224.1%、6:小麦粉197.5%、7:プレミックス195.3%、8:スピリッツ、リキュール193.4%、9:住居用ワックス182.9%、10:住宅用クリーナー177.5%


1位:鎮暈剤(ちんうんざい)24%、2:口紅30.3%、3:写真用フィルム44%、4:テーピング44.7%、5:総合感冒薬49.2%、6:ファンデーション49.3%、7:ほほべに52.6%、8:化粧下地56%、9:眠気防止剤56.5%、10:シワ取り剤56.9%

(出典:「東洋経済オンライン」2020年5月19日掲載。データ提供:インテージSRI)*対象は食品、飲料、アルコール、雑貨、化粧品、医薬品販売金額の対前年度比


各国は新型コロナの感染拡大を防ぐためにさまざまな手段を講じてきたが、感染拡大抑制に効果的な封じ込め政策は、ロックダウン(都市封鎖)や外出規制などで、直接的に経済活動を制限することになっており、各国の政府は、難しい状況の中で政策実行を行っている。

 中国の経済活動は徐々にではあるが、持ち直し始めている。1〜3月期の中国における社債の不履行は、前年同期比3割減少した。共産党政権が中小企業を中心に資金繰り支援に注力したことの効果は大きい。また、感染者数の鈍化とともに生産活動も再開され、失業の急増が食い止められているとの見方もある。

 一方、欧米各国の感染状況に関しては、今のところ、収束の道筋が見通せない。米国では、連邦政府と州政府の連携などがうまく進まず、医療体制が限界を迎えている。ニューヨーク州のクオモ知事は強力なリーダーシップを発揮し、一時は感染鈍化の兆しが出たが、それでも、ニューヨーク州の死者数は増加という厳しい状況で、セントラルパーク内にテントの仮設病院が設置されるほど、米国の医療体制は機能不全に陥っている。

注:インドについては、データと予測が財政年度ベースで表示されており、2020-2021年度は2020年4月に始まった。暦年ベースだと、インドの2020年度成長率は−4.9%。

 

欧州では、フランスの死者数が1万人超え、イタリアでは感染・死者数とも鈍化していると報じられている、イギリスではジョンソン首相自身が一時、ICUに入るなど、政治への影響も深刻化し始めている。ドイツでは減税、付加価値税19%を16%へ、軽減税率7%を5%へ7月1日から年末までとした。スペインでは、ベーシックインカム、一人暮らしの成人の所得保障を月462ユーロ(約5万5000円)、世帯の所得保障を最大月1015ユーロ(約12万円)、7月から約10万世帯へ支給するなどの対策を行っている。

 経済を犠牲にして感染抑制を重視、経済成長を重視し感染抑制を緩くしている国などさまざまであるが、新規感染者が最も少ないニュージーランドやタイ、フィンランドは感染被害が小さいが経済被害が大きい。スウェーデンは外出自粛などの規制がなくコロナ被害は大きいが経済被害は小さいなど、感染を抑制し且つ経済活動も維持できている国は、皆無である。

出典:総務省統計局(https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2020/06/24/WEOUpdateJune2020

国際通貨基金(IMF)は改定した世界経済見通しで、2020年の成長率をマイナス4.9%と予測し、4月時点から1.9ポイントさらに下方修正した。新型コロナウイルスで先進国と新興国がそろって景気後退に陥り、経済損失は2年間で12.5兆ドル(約1300兆円)と試算、英国のGDPは前年比10.2%減と予測。

 新興・途上国は3.0%減と統計がある1980年以降で初めてのマイナス成長となる。中国が1.0%のプラス成長を維持するものの、経済封鎖が続くインドは4.5%減と、石油危機以来の大幅な落ち込みとなりそうだ。感染者数が世界2位となったブラジルも9.1%減と予測され、同国政府によると1948年以来で最も厳しいマイナス成長となる。新興・途上国の21年は5.9%増の見通しだ。



各国で厳しい封じ込め政策の経済への影響は甚大で、今後の対応としては、感染者の早期発見と隔離などの医療体制を整えて、行動制限を行う場所・業種を極力限定しつつ封じ込めをするという、これまで以上に難しい政策が求められている。その中で生き抜いていくために、企業を経営していくために、必要な3つの構造「事業構造、財務構造、収益構造」を再確認していただきたい。どんな商品やサービスを、どのようにして、どういった顧客層に販売するのか、収支はあっているのか、会社がどのように儲けているのか。

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