普段、我々日本人が何気なく使っている日本語でも、学習者にとっては分かりづらいものが多くあります。例えば、国語で言う形容詞・形容動詞は、日本語教育ではそれぞれ、「イ形容詞」、「ナ形容詞」として導入します。
初級学習者にとっては、過去形(例 暑かった、元気だった)や否定形(例 暑くない、元気ではない)の作り方が異なる等、間違いやすい文法の一つです。中級レベルになり語彙力が上がると、「大きい」と「大きな」の違いを混同する学習者が出てきます。「大きい」は「イ形容詞」の一つですが、「大きな」は、ナ形容詞と同じように「な」で終わってはいますが、「~は大きだ」と言えないので、文法上は名詞を修飾する連体詞として分類されています。
たまたま「大きい」という形容詞と形や意味が似ているだけで、歴史上も文法的にも全く別の言葉なのです。また、意味の上でも差があります。「大きい」という形容詞は、実際の物の大きさ(例 大きい靴)を表し、「大きな」という連体詞は、抽象的な事柄の大きさ(例 大きな功績を残す)を表現するのに使われる場合が多いようです。もちろん両方を使える場面もあるので、さらにややこしくなります。この他にも、学習者の目線から調べてみると新しい発見がある日本語が多く見つかるかもしれません。
横山高広:セントラルクィーンズランド大学(オーストラリア)日本語教員養成学科主任等を経て、2015年より現ARAクライストチャーチ工科大学日本語教育プログラム上席講師。クィーンズランド工科大学教育学部博士課程修了。教育学博士 (PhD)。専門は、第二言語習得、教員養成。
この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.96(2018年3月号)」に掲載されたものです。