自然のことだま(8話)

ある秋、くるみの木は、こう言いました。

「秋は、みなさん、寂しそうですね」

私は、「そうですか?」と、ウトウトしかけた首を起こしてくるみのほうを向きました。

「空も、雲も、地面に落ちた葉が走ってゆく足音も。ハチも、鳥も…。
寂しそうで忙しそうで…。でもなんだか、のんびりもしていて…」

「あら、寂しそうなだけじゃないのね」
私がクスクスと笑うと、


「とにかく、みなさん、ひと他人のことなんか、おかまいましという気がするわ…」
とすねたような声を出した後、「でもね」とくるみは一気にしゃべりました。

「あたし、秋が好きなのよ。
だってほら、あたしの子どもたちが、実を破って、あの青いような甘いような香りの種を、せっせと大きくしているのよ。そりゃもう、みんな、大忙しなの。
でもあたしはね、慌てるのはよしなさいって言うのよ。のんびりでいいんだって。
まぁ、のんびりな子もいるけどね。
とにかく、子どもたちがウズウズするこの時季は、私もソワソワしてね。これが、好きなのよ」

「ほらほら、そんなにはしゃいだら、実が落ちてしまうわ」

葉を落しながら大きな声を出す私に、くるみは、誇りを隠した気恥ずかしそうな笑みを向けました。

きっとこの秋も、くるみはたくさんの種を産むでしょう。

秋の寂しさも、忙しさも、のんびりも。外に見えるものはすべて、自分の内にあるのかしら?
そんな話を、再来年あたりに、してみようと思います。

この記事は、ニュージーランドのビジネス系無料雑誌「KIWI TIME Vol.110(2019年5月号)」に掲載されたものです。

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