NZに住み続けるとしても、帰国するにしても、年金不安。

自宅に住み続けるにしても高齢者施設に住み替えるにしても、お金は必要。老後の生活レベルをどの程度にしたいかは人それぞれですが、老後資金の柱となる年金を受給できるのか、移住地であるニュージーランドで受給できるのか、働いて収入がある場合はどうなるのかなど、年金について、あらかじめ明確にしておきたい。

NZ Super:ニュージーランドの公的年金で、日本で言う老齢基礎年金。主な財源は税金からなので、掛けていなくても受給することできる部分が日本とは異なる。

受給資格:

◇65歳以上

◇ニュージーランド国籍、市民権保持者または永住者

◇ニュージーランドと社会保障協定を結んでいる国から移住した場合は、10年未満の居住でも資格を得る場合がある(中国、韓国、ドイツなど)

◇仕事をやめる必要はないが、収入を合算して差し引いた金額で受給することができる

条件:

年金の受給資格は、20歳を過ぎてから10年間滞在し、50歳を過ぎてから5年間経過していること。

受給できる金額

独身、既婚、事実婚、単独で暮らす、扶養家族と暮らす、海外からの年金給付があるなど、さまざまな状況に応じて、個別で受給額が変わる(支給は2週間毎に指定口座に入金される)。

申請方法;

65歳になる前、約3~4週間前までにWINZ(Work and Income )に問合せて申請をする。

※スーパーゴールドカード:年金受給資格を得ると、自動的に送付されるカードで公共交通機関の無料利用や割引サービスなどがある。

2017年3月にニュージーランド政府が発表した内容では、2040年までに年金受給年齢を65歳から67歳に引き上げ、年金を受給する前までにニュージーランドでの滞在年数を10年から20年に変更することを条件にすると発表した。2037年7月1日よりこの政策が実行予定、1972年6月30日生まれ以降の人は67歳からの受給、条件を満たすことができなくなれば、年金をもらえなくなる人がでてくる事になるので、諸条件などを定期的に押さえておきたい。

提供:Work and Income(www.workandincome.govt.nz

KiwiSaver

2007年7月1日から開始され、加入後に積み立てた金額を65歳になったら引き出せる任意の個人年金。ニュージーランド国籍または永住権保持者が対象となり、主婦や学生、18歳未満の未成年でも加入することが可能(未成年の場合は保護者の同意が必要)。自分で積み立てるほか、雇用主から給与に対して計算された金額を、政府からはタックスクレジットとして支払われ、初めての家の購入資金として引き出すことができる、65歳になってローンの返済に充てることができるなど、さまざまな用途に使うことができる。加入年数などの制限があるため、家の購入資金や海外に移住する際に全額を引き出す場合などは、会計士など専門家の助言を受けながら進めることをおすすめする。

キウイセーバーは、銀行預金のように積み立てられるのではなく、積み立てられた金額を銀行のファンドや保険会社などのプロバイダーが株や不動産、債券等に投資して運用することとなる。運用先は自分で選ぶことができるが、配分などよく判らずに、手続き先の銀行のファンドや保険会社に加入した方も多いはず。運用比率が低いディフェンシブ(防衛タイプ)、運用比率が高いグロース(成長タイプ)、総合したバランスタイプなどがあるので、自分の積み立てた金額の配分を再度見直しするとともに、専門家に相談してみるとよい。

参考:Sorted(sorted.org.nz)、KiwiSaver(www.kiwisaver.govt.nz

※キウィセーバーの詳細については、本誌2017年11月号を参考。

◆日本の老齢年金

2017年8月1日から日本の年金制度が見直され、これまで25年間保険料を納めなければ年金の受給資格がなかったところを、10年間と大幅に短縮された。2010年1月に社会保険庁が廃止され、新たに日本年金機構(Japan Pension Service)がスタート、管理を行っている。

◇老齢基礎年金:

支給開始年齢:原則として65歳(ただし、60歳から減額された年金の繰上げ支給や66歳から70歳までの希望する年齢から増額された年金の繰下げ支給の請求ができる)。

概要:20歳以上60歳未満の国民全員が必ず加入することになっている国民年金保険。料金は定額で月額16,340円(平成30年度)、老齢基礎年金の支給額は加入期間に応じて決まる。この加入期間は、国民年金保険を納付した期間に厚生年金被保険者期間、第3号被保険者期間(配偶者の被扶養者期間)を加えた月数となる。

◇老齢厚生年金:

支給開始年齢:昭和36年4月2日以降に生まれた男性、昭和41年4月2日以降に生まれた女性の場合は65歳(この期間前に生まれた方は報酬比例部分の支給年齢などが異なる)。

概要:老齢基礎年金に上乗せされて、給付される老齢年金。老齢基礎年金に、老齢厚生年金が加算され、合計金額を受給することになる。

50歳を過ぎたら、現在の支出をダウンサイジング!将来の資金として貯金しながら、少ない金額でも生活できるようにしておこう。

出典:日本年金機構ホームページ(www.nenkin.go.jp)、日本年金機構|ねんきんネット(https://www.nenkin.go.jp/n_net/

【インタビュー】

「年金受給」のリアル<年金受給者の声>

日本の年金を受給しています

Aさん(70歳)は日本国籍を持ち、ニュージーランドに在住。ニュージーランド人の夫と2人で暮らす。

ニュージーランドで年金を受給できますが、なぜ日本から受給する手続きをされたんですか。

「年金はどちらの国から受給するのかを選ぶことができ、行く行くは日本に帰ろうと思っていたので、日本から年金を受給する事を決めました。手続きをして、60歳から国民年金、65歳になってからは厚生保険が加算されて受給しています」

年金受理の手続きは難しくなかったのですか?

「書類が郵送されてきましたから、そんなに大変ではなかったですよ。手続きをしてから、今も日本の口座に振り込まれています。年金の金額は毎月10万円以下で高額ではないので、確定申告はしていません。申告の為の書類(非居住者等に支払われた給与・報酬・年金および賞与の支払い調書)もニュージーランドの住所に毎年送付されますが、年金以外の収入がないので、申告は必要ないようです。ただ、日本の銀行からは郵便物が返送されるけどどうなっていますかという問合せがあって、日本に帰った時に銀行に行って、海外に住んでいる事と、終身保険の支払いなどもそのままだから住所は変更せずに、という事で対応していただきました。海外の住所だから、マイナンバーも持っていません」

滞在時期や場所で選ぶこともできたのでは?

「ニュージーランドに居る時はここでもらって、じゃあ日本に帰りますからといって日本からもらうのは身勝手すぎるというか、都合よすぎて、私はそれを望まなかったんです。現在とは少し状況が違って、私が60歳の頃はずっとここで暮らしていきたいと思っていたのに、でも反対に主人は日本に移りたかった、そんなことで今に至っているんです。最近では、私も日本で最期を迎えたいと思うようになってきて、帰国を検討しています」

60歳から年金をもらっています

(69歳。Bさん、日本国籍、日本在住)

「私の父は年金を受給することなく、早くに他界しました。その事もあって、私は60歳になってからすぐに年金を受給するようにしたんです。金額は少ないけど、いつ死ぬか判らないから、受給できるようになってすぐに手続きをしました。金額は4万円ぐらいです」

【インタビュー】

ニュージーランドで年金を受給しています

(77歳。日本国籍保持。ニュージーランド在住。パートナーと2人暮らし)

ニュージーランドで年金受給の手続きをされていますが、金額的に満足されていますか。

「満額を受給していませんので、満足かどうかはわかりません。でも病気や怪我に遭った時の治療や手術に対しての保障があるから、日本より安心して暮らせていると思います。そういった意味では満足しています」

満額を受給されていないのは、収入があるからという意味でしょうか。

「はい、定期的な収入があるので、申告したら減額されました。後から返金しろと言われても困るので、正直に申告しました。日本で年金を受給しても同じだと思うので、病院代の分、この国が安心できますね」

将来は日本に帰国しようとお考えになったことはありませんか。

「若いというか50代の頃には考えていましたが、いまではここで。移民ですから、出て行けと言われるまではニュージーランドで生活したいですね。日本もバリアフリーになっていると言いますが、高齢者には未だ厳しいと思います。この国では、ベビーカーとか車椅子の駐車スペースに違法で止める人はほとんどいないし、自動の車椅子を運転してカフェに行くこともしやすい環境ですよね。自分が高齢になって、よく感じるようになりました。不自然に優しくないというか、高齢者も障害を持った人も子どもや若い人も全てが共存しあっている気がします。特別な人を見る目ではなくて、普通に生活しているというか。それと今のところは相続税も無いので、日本に住んでいる子ども家族にとっても、私がこの国に住む方がいいのかなと思っています」

年金をもらう国を変更しました

(77歳。日本国籍保持。ニュージーランド在住)

「日本に滞在していて年金を受給していましたが、ニュージーランドに住む事になって、ここで骨を埋めることにしたんです。2箇所から満額はもらえないので、日本からの年金は受給しませんという書類を作成してもらって、申告しました」

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老後の生活に求める要素は人それぞれであり、これが正解という選択肢はありません。身の丈にあった範囲で自分らしい生活を過ごせるよう、体力や判断能力が低くならないうちに、さまざまな角度から検討してみてください。

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.104(2018年11月号)」に掲載されたものです。

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