カンヌ映画祭上映後、ロマン・ポランスキー監督の30年来の妻であるフランス人女優エマニュエル・セニエが、SNSでクエンティン・タランティーノ監督を激しく非難し物議を醸しだしたのは、つい数か月前のこと。皮肉にも、それで一躍脚光を浴びたタランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time in Hollywood) 」が早くも銀幕に登場。
映画好きには、セルジオ・レオーネ監督の遺作であり代表作、まだ若き日のロバート・デ・ニーロが禁酒法時代のユダヤ人ギャングを演じた「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を彷彿とさせるタイトルからいって、挑発好きのタランティーノ監督らしい。
1969年に当時妊娠8か月だった妻の女優シャロン・テートを、チャールズ・マンソン率いるカルト教団に、母子共々惨殺され、それも後に人違い殺人だと判明。悲劇の天才監督として、絶望から這い上がりながらアメリカで映画を撮り続けたポランスキー監督。しかし、1977年に、ジャック・ニコルソン邸にて、当時13歳の子役の少女への淫行容疑で逮捕されたことで、運命は一転。釈放後に、アメリカを捨て、パリに脱出し、以降、「戦場のピアニスト」がアカデミー監督賞を受賞した際も受賞式には出席せず、二度とアメリカの土を踏んでいない。ユダヤ系ポーランド人のポランスキーは、母親をアウシュビッツで虐殺され、自身もユダヤ人が一斉逮捕される直前に、ゲットーの有刺鉄線を切った穴から脱出し、「ユダヤ人狩り」から転々と逃げ延びた波乱万丈の幼少時代を過ごしている。
これだけでもセンセーショナルな内容だが、このシャロン・テート殺害事件を背景とした、当時のハリウッド映画界を舞台に、レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ッピット、アル・パチーノと、主役級の大スターの夢の競演となれば、映画好きの好奇心に抗うことは不可能だろう!