“身奇麗にして笑顔でいようという気持ちになるんです” 木山 有加さん

2010年に離婚。

2011年に子ども4人と一緒にニュージーランド、クライストチャーチに渡航。

2011年2月22日にカンタベリー地震の被害に遭う。

2013年サロンを開業。

2014年に永住権を取得。42歳から始めた勉強と仕事。

 

KT:ニュージーランドで起業したきっかけを教えてください。
YK:離婚が大きな要因です。アルバイト以外に働いた経験がない私が子どもを育てる為には「手に職を」持たないといけないと考え、勉強する事から始めて起業しました。42 歳の時です。

KT:起業されたのはニュージーランドですが、何がきっかけだったのでしょうか。
YK:少し話が前後しますが、離婚するまでは日本で生活していました。私が高校生の時、親を説得して2 ヶ月ほどアメリカに短期留学。高校卒業後は、アメリカに留学するための準備をしていましたが、20 歳の時に50cc バイクで転倒し、骨のつながりが悪かったので1 年ほど入院しました。結局、アメリカに行くこともなく、自宅で花嫁修業みたいなことをして、24 歳で結婚しました。幸か不幸か、どこかで働くという経験もないまま、離婚という結果になりました。当時は、離婚したと噂されるのが気になって日本に住むのが嫌で、とにかく出て行きたいと考えていました。クライストチャーチに住んでいる仲のいい友人に相談して、ニュージーランドへの渡航を決意。右も左もわからないまま、学生ビザと
ガーディアンビザを取得、母1 人、子ども4 人、クライストチャーチでの新生活を始めました。

KT:地震が起きた時にその場にいらしたそうですが、帰国をお考えにならなかったのですか。
YK:渡航してすぐの2011 年2 月、カンタベリー地震の被害にあいました。市街地で食事をして帰ろうとしている時に揺れ始めて、窓ガラスなどが割れる中を避難しました。怖かったのですが、日本に帰りたいという気持ちは不思議となく、この国に3 年間は絶対にいると、気持ちを固めていました。地震後、日本に一時帰国で帰った時、デパート内のサロンでまつげのエクステンション施術をしてもらいました。「なんて軽くて、自然なの」って驚きましたが、それ以上の事は考えずに、再びニュージーランドでの生活を再開しました。資格や経験がない私が働くことは難しく、持参したお金は減る一方でした。子どもを育てる為には何か資格を、と考えている時に、日本で施術した自然なまつげの感覚を思い出して、「まつエクの資格を取って、ニュージーランドでみんなに、誰かにしてあげたい」と思うようになりました。ウェブで情報を調べていると、私が日本のデパートで行ったサロンが運営する学校を見つけたので、すぐに連絡して入学しました。いつも行動は、早いんです。学校では、眼に関することや使用するグルーの成分など覚えることがたくさんで、実技や筆記試験などクリアしないといけないので大変でしたが、資格を取得することができました。資格取得後、再度クライストチャーチに戻り、当時あった日本人経営ヘアサロンのスペースを借りて、まつげのエクステンションができるサロンを開始、起業しました。

KT:開業する際の準備はいかがでしたか。
準備は、スムースでした。まつげ用のグルーや美容ベッドを日本から取り寄せたり椅子を購入したりと初めての事でしたが、大丈夫でした。日本人経営のヘアサロンから自宅にサロンを移し、現在も自宅でサロンの運営をしています。

KT:セルフホワイトニングを始めたそうですが、いつごろから開始されましたか。
YK:今年から始めました。日本では口の中を触る場合に医師免許が必要ですが、指導する、触れないタイプの「セルフホワイトニング」が主流になってきています。歯科医院で行うホワイトニングとは違い、漂白ではなくてジェルを塗った後にライトをあて、汚れを分解して落としながら本来の歯の色に戻します。このジェルは、口の中に入れる物なので、オーガニックの製品を日本から取り寄せています。歯科医院のホワイトニングは痛いけど高額、このセルフはジェルを塗った後、LED ライトを8 分を2 回当てて、その後はブラッシングで流すだけの簡単な作業で色も2 トーンは落ちます。私自身
も試しましたが、ジェルでコーティングしているので、施術後すぐにワインなどを飲んでも、歯の着色汚れ(ステイン)を弾いてくれるので、気に入っています。

KT:お一人で運営されているサロン経営の秘訣を教えてください。
YK:秘訣というか、「日本製品で、いい品質を、低価格で提供」することは絶対に続けたいというこだわりを持っています。まつげ用のグルーやエクステ、自分で取り外しができる形状記憶のジェルネイルチップ、ホワイトニング用のジェルやライトなど、日本から取り寄せています。特にまつげ用のグルーは、開封したら2 ヶ月に1 回交換しないといけないので、残っていても捨てなければいけません。為替の変動や送料が通常より多く加算される場合でも、今の料金設定は変えたくないですね。日本では、仕事帰りや家事の合間に行けるサロンが多いんです。それも、低価格で。私もこの国で「気楽に行けるサロン」として、いろいろな方にキレイになって帰ってほしいと思っています。そしてもう1つ、秘訣というか、お客さまが喜んでくださる瞬間がうれしくて、そして元気をもらっているから、続けられるのだと思います。

KT:最後に、ニュージーランドで起業したいという方に向けて、メッセージをお願いします。
YK:美容関連の仕事をされたい方は「日本製品の使用と日本のサービスを提供」する事を心がけてください。そして「好
きなことをやった方がいい」と思います。私の仕事は1 点を集中して見ることが多いので肩こりがひどかったり、子育ての悩みで気が落ち込む時もありますが、美容サロン用のエプロンをすると、仕事モードに切り替わります。身奇麗にして笑顔でいよう、という気持ちにモードが変わるんです。日本にいる頃から「美容関係が好きで、美容に関する仕事をしたい」と思っていたから。好きなことは、続けることができる活力に変わるのだと思います。

 

木山 有加(きやまゆか)
クライストチャーチ在住。47 歳。子ども4 人(21 歳、20 歳、18 歳、10 歳)と犬1匹の家族。2011 年にガーディアンビザを取得して渡航し、2013 年にサロンを開業、現在に至る。趣味は愛犬との散歩、赤ワインを飲むこと。
Magical Touch Beauty Salon
www.magicaltouchbeautysalon.jimdo.com

 

インタビューを終えて:
結婚、離婚、子育て、地震と波乱万丈な人生を経験されたゆかさん。外見はどちらかというと「何不自由していない、セレブタイプ」だが、仕事の説明を始めると、生き生きとした表情で内面からのガッツがどーんと感じられた。40 歳を過ぎてから勉強を始めたのだから、並大抵の努力ではなかったと思う。働くことに生きがいを持つ女性、ゆかさんのこれからが楽しみだ。

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.93(2017年12月号)」に掲載されたものです。

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