後藤剛氏(Owner,Baker’s Diary)

オークランド中心地から車で約25分のローズバンクロード沿いにあるベーカリー「Baker’s Diary」。ジーンズを製造販売する会社での営業職から全く違う分野に踏み出し、成功を収めている日本人オーナーの後藤剛氏に話しをお聞きした。

ミートパイとの出会い

国産ジーンズメーカーの営業職で働いていたが、外資系のアパレルメーカーへの転職を視野に入れ、勤務しながら英語を勉強していた後藤氏。

「この業界、パン作りを始めたのは、この国、ニュージーランドからです。会社を辞めた後、ワーキングホリデービザを使って、この国に来ました。ニュージーランドに着いて初めて食べた食べ物がビックベンのMince & Cheese Pieで、PieはNZの国民食だと知り、なんとなくワーホリ中に作り方を覚えて帰ろうと思いました。

偶然にも、オークランドでの最初の職場、お土産屋さんで働かせていただいたのですが、そこの同僚が、「友人がダニーデンでパイの工場を経営いているから、紹介しようか?」と言ってくださり、工場でエクスチェンジするようになりました。

パイづくりを習ったあと、新聞で、パイ職人募集で求人広告を見つけ、アロータウンのベーカリーに応募し、働くことになりました」

実践を通してパン作りを学ぶ

「ワーホリの滞在期間が終わり、一度日本に帰って、日本のパン屋さんで働いたんです。帰国後もアロータウンのベーカリーの方と連絡を取っていて、空きがあるから来ないかとオファーをもらいました。就労ビザをサポートしてもらい、再度この国に戻ってきました。それから、ベーカリー枠で永住権を申請、ちょうどニュージーランド不足職業リストに指定されていたので、比較的、容易に取得できました」

その後、いくつかのベーカリーで実践を通して製パン技術を学んだ後藤氏。

クイーンズタウン時代の勤務地、Cake Adventure(現European Bakery https://europeanbakery.co.nz/)では、スイス出身のオーナーの元、伝統的なライ麦パンの製法を学ぶ。ライ麦粉を使用したパンは、現在も店舗に並ぶ人気のパンだ。

「その後、もう少しスキルの幅を広げたいと思い、活動の場をオークランドへと移しました。オークランドではドイツやフランスをはじめ、様々な国から来た職人さん達と働く機会を得て、仕事を通して、いろいろな国の製パン製法、文化を学びました。

それまで実践で学んできましたので、基本があやふやでした。土台になるものを作るために、一度日本へ帰国。製パン従事者の為の研修期間である、日本パン技術研究所(www.jibt.com)で、製パン理論、実技を学びなおしました。そこで得た知識、出会った同期のパン職人さんたちとの交流は、今でも財産です」

オークランドに戻った後は、現在のベーカリーのある場所(旧Swiss Konditorei Bern)にて、スイス人オーナーの元、伝統的なヨーロッパスタイルのパン作りに従事する。

Gパン屋からパン屋へ

「しばらくして、スイス人からオーストリア人のオーナーに変わり、そのまま継続して働いていましたが、半年くらい経った時にオーナーからこのパン屋の営業を辞めるからと言われました。厨房や周りの環境のこともわかっていたので、自分が引き継ぎますと伝えて、正式に契約。店名を「Baker’s Diary」に変えて、自分のビジネスとして開始しました」

Baker’s Diaryの店舗はモーターウェイから伸びる道路沿いにあり、工場や会社が多く並ぶ場所に位置する。偶然立ち寄れる場所ではなく、買うために行く場所にあるにも関わらず、オークランドで開催されるジャパンデーに出店すると、長い行列ができる人気のパン屋さんだ。開業当初に日本人向けのウェブサイトで告知するも、ほとんどの顧客は口コミで拡がったという。

「以前からの顧客がいたのと、パン作りに必要な機材もある状態だったので、幸運でした。もう1つ幸運だったのが、隣のビジネスオーナーが変わった時に契約条件を変更できたことです。

これまでは、隣の店と同じようなものは扱わない、サンドイッチ類も扱えないという契約条件だったので、コーヒーなども販売できなかったんです。僕がオーナーになって2年くらい後に隣のオーナーも変わって、その時にランドロードにこういう事をやりたいと伝えて、コーヒーやサンドイッチなどを販売できるよう条件を変更してもらいました。。それまでは、通常のパンだけの販売でした。

販売できる商品に制限があったので、開店して1、2年目は店舗営業だけでは経営が大変でした。週末にクレブドンやキングスランドのマーケットに出店していましたが、コーヒーやサンドイッチ等も販売できるようになった頃に、マーケット出店からホールセールにシフトしていきました。ファンクションベースのケータリングやハンバーガー店、カフェなどから注文があるようになったのが、開業して3年目くらいです」

現在では、平日は主にローカルのオフィス向けに健康的なサンドイッチを作り、土曜日は、ヨーロピアン向けのパンなど色々な種類のパンを作っているそうだ。

Japanese Bread Day

毎月第二土曜日は「Japanese Bread Day」。月に1度の日本のパンの販売を楽しみに、多くの顧客が訪れる。

「日本のパンを用意する時は、木曜の夜中に起きて金曜日の通常営業をして、そのまま土曜日という感じです。時計を見ながら、これを今してとか、考えながら作っています。機械で作業してくれる部分も多いけど、成形は1個ずつ。生地の種類も多いし、日本では業者さんが持っているパンの中身の餡やカレー、クリームなどはこの国では無いから、一から作っているので、結構大変ですよ。でもご要望があるので、15種類くらいは日本のパンを、そしてそれ以外のパン15種類を合わせて、毎回30種類くらいをご用意しています」

同店で開催している「Japanese Bread Day」の他、オークランドで開催される「ジャパンデー」、ペンローズで毎年開催されている「スイスマーケット(https://www.facebook.com/swissmarketday)」など年に一回のイベントなどにも出店している。

今後は…

パン作りには欠かせないバターなどの乳製品が高騰する中、販売単価を上げるなどお考えですかと聞いてみた。

「数年前はバターが3.5ドルだったのが、今は7ドル。バターだけでなく、諸経費が上がる中、小売り店を取り巻く環境は決して楽ではありません。ただ、パン屋の商品は日常的なもの。限界プライスってあると思うんですよね。あまり高いと買わなくなる、来なくなってしまう。マーガリンにシフトしちゃうとお客さまが減ってくる、最後は、自分が何をやりたいかっていうところだから、難しいですよね」

現在の店舗は厨房部分が大きく、手前に販売部分があるパン工場に近い。後藤氏は、ここでやるからには、ホールセールでの必要性を感じているという。

「直近の目標はホールセールをもう少し増やしていきたいと考えています。でもいつかはリテールのみで、丁寧に作りこんだ商品をお客さまに直接届けられる店にしていきたい。パン屋の仕事が好きで、楽しいのです。やりたいことはあるけど、そこにどうやって、辿り着こうかなと考えています。あれこれ考えるのは楽しいですね」

後藤氏の作るパンは、BIANZ( Baking Industry Association of NZ|http://www.bianz.co.nz/)で毎年開催されている「Bakery of the Year 2018」のパン部門でも選ばれており、Stollenで銀賞、Sourdoughで銅賞を受賞するほどの腕前。後藤氏は、嬉しいですね、と笑顔で話を締めくくってくれた。

後藤剛:TSUYOSHI GOTO(Owner, Baker’s Diary)

Suite 5, 448 Rosebank Rd, Avondale, Auckland 

09-828 5870|FB:bakersdiarynz|Instagrum:bakersdiarynz

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