自然のことだま(2話)

◆作・題字・イラスト◆ はづき:Instaguram:nzhazuki┃w:malumaluhazuki.com

ある春の終わりのことです。

あの年は、綿毛やら、種やら、私のそばをずいぶんとたくさん通り過ぎていきました。
風に乗って、フワフワと飛んでいくのです。
ある者は、「いいところへ行くんだ」と言いました。
ある者は、「どこに連れて行かれるの?」と尋ね…。
またある者は、「この先に何がありますか?」と問うのです。

私は、何も知りません。
ずっと、ここに立っているだけの木ですから。
ですから私は、にこにことと笑って小さく頷きながら見送るだけでした。
 
あの春の終わりから、もう、幾度も同じ季節がめぐりましたが…。
きっと、「いいところへ行くんだ」と言った者は、いいところへ行ったのでしょう。
「どこに連れて行かれるの?」と尋ねた者は、どこなのか判然としない場所に連れて行かれたのでしょう。
「この先に何がありますか?」と問うた者は、今も、またその先に何があるのかを気にしているのでしょう。
それも、私の推測にすぎません。
私は、何も知りません。
ずっと、ここに立っているだけの木ですから。

ずっと、ここに立ち続けることが宿命の木ですから。

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.104(2018年11月号)」に掲載されたものです。

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