Garden Flowers by Miki

和と洋の折衷とでもいうべき作品だ。あるいは和の要素が散りばめられた西洋風の絵というべきか。もし背景に色が入らず、紙の白いままであったら、おそらくもっと日本的なものに見えただろうが、この作品では淡い黄茶系と緑系色が背景を彩っている。西洋風か和風かというのは、実は本当に些細なことなのだが、この作品では「和」の長所を取り入れながら、大和絵・日本画の弱点になり得る要素を排除している点が素晴らしい。

 書や禅画に通じる、画面中央を縦に貫く太い筆到は、そのかすれ具合とともに、植物の力強い「生」を感じさせる。それは植物の茎というより、むしろ樹木の幹のような貫禄だ。大胆な構図も和的センスを感じさせる。縦向きのオブジェクトを横向きに配置する。それも真ん中より若干左に寄せてある…この危うい空間感覚は独創的だ。

注目すべきは下描き(あるいは輪郭線)と色塗りの関係性だ。禅画を含めた水墨画では下描きを行わず、書のように筆のストロークで描き進めていくが、平安以降の大和絵、そして明治以降に確立された日本画では、下描きを忠実に塗り分けrという、塗り絵手法が主要となった。この作品では、下描きが見えるにも関わらず、色は輪郭線などを気にしないかのように自由に踊っている。そう、立入禁止のロープを超えたがる子供のように。この手法は、西洋においてはマネやその同時代の画家が取り入れ、「邪道」とも揶揄されたものの、のちにロートレックやドガ、ゴーギャンなどに受け継がれることで「こういう描き方してもいいんだ」と認められたものだ。「塗り絵」的な日本画技法は「きれい」で「整然」としているが、それは絵の「活きの良さ」を殺してしまうリスクがある。特に子供には、「きれい」だけど「死んでいる」絵を書いて欲しくはない。

水彩は、よく最も難しい画材だと言われる。もちろん、透明・不透明水彩で大きな差はあるが、特に淡彩を使用した場合、失敗の修正は不可であるし、乾燥後の発色具合やにじみを予測するのは不可能だというのが、そう言われる所似である。しかし失敗を恐れない子供には最強の画材にも成り得るようだ。この作品の背景は透明感のある淡彩なため、にじみが美しい形となって現れている。遠くに見える山脈のような、雲のような波線。緑と黄茶が織りなす柔らかいトーンは、大地に現実味と幻想性を与えてくれる。

そして肝心な、この作品のフォーカスポイントである花びらはリズミカルで心地よい筆致で描かれている。彩度が強いブルー、青紫、両者と赤が混ざった深い赤紫…美しいものを鮮やかな色を軽快なタッチで描くだけだ。ここには西洋も和もない。音楽のように奏でられた絵、絵楽があるだけだ。

この記事は、ニュージーランドのビジネス系無料雑誌「KIWI TIME Vol.110(2019年5月号)」に掲載されたものです。

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