テクノロジーの発達は、教育にも大きな変化をもたらしていますが、日本語教育も例外ではありません。授業の連絡や課題の提出、採点結果の連絡などは、『Moodle』などの学習管理システムを使うことが一般的になっています。
カンタベリー大学の日本語初級コースでは反転授業を導入し、教室に来る前に文法や漢字について説明したビデオを見て、授業ではより多くのインターアクションが行えるように工夫しています。また、学習者から日本語使用者へのシフトの場として『Facebook』を使い、自己紹介文を書いたりビデオを投稿したりするタスク、それに対してコメントを書くというタスクも行っています。
Web会議システムの発達も目覚ましく、100人まで一斉に接続することができる『Zoom』を使い、日本と韓国で日本語を学んでいる学生とのワールドカフェ[1]を実施できるようになりました。Volatility、 Uncertainty、 Complexity、 Ambiguityに象徴されるVUCA worldの現代は、教室や教育機関、国境を越えて瞬時に世界の日本語学習者とつながるテクノロジーの時代でもあります。日本語を使って対話をしていくことで広がる可能性に希望を託しながら、日本語教育に取り組んでいきたいと思っています。
[1] 『ワールドカフェ』は「知識や知恵は、機能的な会議室の中で生まれるのではなく、人々がオープンに会話を行い、自由にネットワークを築くことのできる『カフェ』のような空間でこそ創発される」という考えに基づいた話し合いの手法です。
荻野雅由 :カンタベリー大学人文学部日本プログラム、レクチャラー。ニュージーランド日本研究学会(JSANZ)副会長。ワイカト大学人文学部応用言語学科博士課程修了。博士(応用言語学)。言語習得と日本語教育学に興味を持っています。
この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.95(2018年2月号)」に掲載されたものです。