Princess Kate by Miwa

そう、丸やきれいな曲線を描くのは至難の技。たとえプロのマンガ家でも。しかしながら、この作品における曲線は匠の技である。この画家は、早すぎもなく、遅すぎもない一定のスピードで、ブレることなく一気に線引きをしているのだ。

 絵を描く時、特に何か目に見えるものを描く時、重要視されることに「オーバーラップ(重なり)」がある。物が重なって見えない部分がある時に、そこをどう描くかで作家の創造性と想像性が問われる。キッッチリと描くには遠視力が必要になる。特に右耳部分の、耳、イヤリング、頭髪の三者がきれいに重なり合っているところは注目だ。本気で対象物を見ていることの証である。大人のいい加減な観察では、どうしても前に見えているものから描いていき、隠れて見えない部分は無視する傾向があるが、観察眼を養うには、「見えないところを見る」訓練が上達に繋がるのである。「この絵、色が少なくて寂しい」などという感想はご法度だ。パレットの色を制限して絵を描くのはとても勇気あること。12色、あるいは24色セットのクレヨンや絵の具があり、そこからたった1色だけを選ぶ。それは難しいこと。対象人物の被っていた帽子の赤がきっとこの画家の目にまぶしく映ったのではないか?服、イヤリング、髪、目、唇…彩がある箇所は他にもいろいろあるのにも関わらず、帽子だけに焦点を絞るのは、グラフィックデザイナー的な視点で興味深い。

 左耳を注意すると、消された耳があるのに気づかされる。最初ちょっと低いところに描いてみたものの、「ここじゃない」と気がつき少し上に書き直したようなものだが、誤差は5mm程度なのだ。このこだわり、そして視察力は生まれ持ったものなのだろうか。ずっと大事にしてもらいたいものだ。

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.109(2019年4月号)」に掲載されたものです。

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