「UNTITLED」by Sora

「怖い」と思ってしまった。この絵に対してではなく、自分自身に対して。この絵をここで紹介するのはどうなんだろう?と思ってしまった検閲官加した「大人の」自分を怖く感じる。これは9歳の男の子が描いた素直な絵だ。それに関わらず、こちらが試されているような気になってくる。大人が子供の絵を褒める時なんと言うだろうか。「上手だね」「かわいい」「きれい」と当たり障りのないコメントか、褒め言葉がでてこない場合は「すごいね」「面白いね」とかであろうか。「お〜」というのが自分の口から出た第一声だ。

 この鑑賞ポイントは三点あるように思える。「題材」「焦点」「構図」。

 大人の世界では、自分が関わりさえしなければ「殺し」はエンターテイメントだ。テレビドラマ、映画、推理小説、ワイドショー…。では子供の世界ではどうなのか?ダメなのか?時代劇はファミリーで安心して見られるドラマジャンルの一つだが、よくよく思い返してみると、人を斬るシーンは耳に心地よい「ズバッ」という音だけで血飛沫もなく、本来なら血みどろになるシーンでも、無名俳優を地面に寝っ転がせてお茶を濁している。ここではストレートにごまかし(検閲)なく「殺し」のシーンが描かれている。子供の素直さに清々しさを感じるほどだ。

この絵の焦点は黒いガンマン(?)だ。塗りつぶされていないため毛並みにも見え、ゴリラ?あるいは小さめのキングコングが銃を持っているのか?と興味をそそられる。そして「鮮血」。浮世絵師も血の赤をどう表現するのかにこだわったという。

構図の取り方と遠近法の使い方もユニークだ。道路を俯瞰(ふかん)で格子状に配置したことにより、本来なら遠近感がなくなるのであるが、この画家は人物と家に、サイズ対比による遠近法を採用し、全体的に大和絵的な大胆さを表現することに成功している。何とも狩野派も、歌川一派も喜びそうな絵ではないか。

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この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.103(2018年10月号)」に掲載されたものです。

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