Untitled by Seira

これはなんだ?画家自身何を書いたか覚えていないという。抽象画?とも思ったが、子供は概して抽象画を描くことはない。描く必要がないからだ。2〜3歳児は「抽象画っぽい」ものを描くが、意識して描いているのではなく、ぐちゃぐちゃするのが楽しいから、というだけの理由だ。

 さて、探偵になってこの絵が何を伝えているのか探ってみよう。右上コーナーにあるのは太陽、画家が住む街には河が流れているので、画の左右を断裁する太い青の線は河川かもしれない。であるとすると…、この画は俯瞰図(ふかんず)?それにしては街らしきものが描かれていない。緑は草木、赤や紫は花や果実と断定してしまうのはたやすい。しかしこの作品上では、単なる風景描写だけでない、画家の思考の流れが垣間みられる。つまり、何かを描こうとしていたのだが、だんだん描くことが楽しくなり、本来の目的=風景描写はどうでもよくなってしまった…そんな風にも感じられる。

 右サイドの背景の黄土色の塗り方は職人技だ。丁寧に塗られた、一定方向でなくさまざまな向きで塗られたストロークは、まるでプロのグアッシュ画をみているかのようだ。点描表現からは、この画家には集中力があり、忍耐力があるというのが分かる。淡いブルーグレー、赤、青、紫、黄色の点描群がいかにこの絵に影響を与え、全体を引き締めているのかが分かるはず。

 太く青い断線で区切られた暖色系のエリアと寒色系のエリア。砂漠の国と氷の国くらい別世界にも見えるのにも関わらず、両サイドが調和しているように見えるのは、彩の小片(点描群)が画面いっぱいにちりばめられ、ハーモニーになっているからだ。ジャマイカの内紛を音楽で平和解決に導いたボブ・マーリーを思い出したのは私だけだろうか(きっとそうだろうが…)。

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.106(2019年1月号)」に掲載されたものです。

最新情報をチェックしよう!
>雑誌「KIWI TIME」について

雑誌「KIWI TIME」について

2010年創刊。雑誌「KIWI TIME(キウィタイム)」は、K&J MEDIAが毎月発行するビジネス系無料雑誌です。ビジネスに関する情報やインタビュー、仕事の息抜きに読みたくなるコラムが満際です。

ニュージーランドで起業している方や起業をしようと考えている方を応援します。

CTR IMG