アプリ開発者として、家族3人でパーマストンノースに暮らすジョセフ・ポール・ハーパーさんを訪ねました。
(以下、KT:KIWI TIME Japanese Magazine)
KT:なぜパーマストンノースで起業をされたのですか?
JPH:イギリス人の父親の仕事の都合で、幼少時にパーマストンノースに移住してきました。大学卒業後はオークランドのIT企業で働いていましたが、仕事のあり方に疑問を持ち、一旦区切りをつけるために韓国やイギリスでの職務を経験しました。ロンドン滞在中に子どもが生まれることが分かり、これを機にNZに戻ることを決意しました。妻が日本人なので、日本に住むというオプションもあったのですが、言語の問題や「自分でビジネスを始めたい」という気持ちがあったので、NZを選びました。オークランドかパーマストンノースか迷ったのですが、子育てにはやはりパーミーだという結論になり、学生時代まで過ごしたこの街に戻ってきた後、娘を授かりました。
学生時代には全く気付かなかったのが、「ビジネスの街」としてのパーマストンノースの側面も大きな要因となりました。NZのアグリサイエンスとロジスティックスの中心地ですし、OBOやFrog Parkingなど、パーマストンノース発祥のビジネスがどんどん海外進出しています。
KT: なぜ企業への就職ではなく、起業を考えられましたか?
JPH:他人のために働く、ということに満足感が得られなかったからです。もちろん、会社員時代にはプログラミングやマネジメントの経験とスキルが身についたので、そこは良かっと思っています。しかし、自分が取り組んでみたいと思うプロダクトを生み出せることができるのは、自ら起こしたビジネスでないと難しいと感じたので、起業を決意しました。
KT:ビジネスという観点で大都市とパーマストンノースを比較してみて、どう思われますか?
JPH:この街と大都市を比べると、特にIT分野では人材の確保という点で、違いがあるように思えます。オークランドでの起業を回避した理由の一つに人材の確保難があります。実は前回のプロジェクトは、ロシアや中国のデベロッパーやデザイナーとの共同プロジェクトで、仕事のクオリティは問題なかったのですが、時差や物理的距離が作業工程のスピード感を鈍らせてしまったのが気にかかっていました。そこで今回、過度な期待をせずに地元でチームメンバーを募集したところ、思いがけず優秀な人材が集まりました。オークランドでは一流のデベロッパーはすでに大企業で活躍していることが多く、無名の新参企業が人員募集をしても、言葉は悪いですが「残りの人材」しか応募してこないことも多く、今回の募集で大都市の人材に全く劣っていない、この地域のベスト人材が確保できたことは嬉しい誤算でした。パーマストンノースに暮らす移住者の中には、母国で高度な職務に携わってきた人も多いのですが、そのスキルを活かせないまま一般的な仕事をしている人も多くいます。彼らはやりがいのある仕事を探しているため、事業主にとっては、分野にもよりますが、いい人材が見つかる可能性もあります。
KT:ご自身のビジネスについてよく考えるられることはありますか?
JPH:IT業界にいる限り「時代の先端を行く」またはそれに「ついて行く」事が一番大切なことです。SonyとSamsungを比べると分かりやすいですね。良し悪しは別にして、失敗を恐れずに新しいものに常にチャレンジするのか?あるいはたとえ2番手でも堅実にパーフェクトなものを追い求めるのか? 正解はないですが、自分は「新しいアイデア」を考えている時が一番ハッピーですし、その新しいものへの「チャレンジ精神」こそがNZ流だと考えています。常にクリエイティブであり続けたいですね。
KT:パーマストンノースの気に入っているところは何ですか?
JPH:私のようにここで育った人間は、外に出ないと良さがわからないものです。学生時代に「何もない」「つまらない」と感じた街が、今は「リラックス」できて、渋滞も無縁でどこにでも簡単にアクセスできる「ストレスフリー」な街。子育てには最適だと改めて実感しています。
JOSEPH PAUL HARPER:SOFTWARE AND APPLICATION DEVELOPER
OWNER OF SHINY EGG, LTD. PALMERSTON NORTH
この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.95(2018年2月号)」に掲載されたものです。