”動物たちに真摯に向き合う“ 肉牛ファーマー、波田修一氏

肉牛ファーマーとして、家族4人と暮らす波田修一さんを、パーマストンノース近郊の街、ダニーバークに訪ねました。(以下、KT:KIWI TIME Japanese Magazine)

 

KT:ニュージーランドに移住したきっかけは何ですか?

SH:日本での広告代理店勤務時代にNZに出会い一目惚れしました。そして1999年に「絶対に永住権を取るぞ」という気持ちで、ワーキングホリデーを利用してニュージーランドに渡航しました。もちろんその時はNZで農場を経営するとは、夢にも思っていませんでした。

 

KT:ファーマーになるまでの経緯や大変だったことをお聞かせください

SH:オークランドでは日本語情報誌出版社に勤務し、2000年にワークビザ、2001年に永住権を取得しました。その後、何度か転職しましたが、現在の妻(日本人の)に出会い、2003年に結婚。このままの会社勤めに疑問を感じていたのもあり、義母が日本で経営しているアロエ農家が、NZでもできるのではないかと考えました。オークランドの自宅でのアロエの試験栽培が上手くいったことや、私の両親からの資金援助などもあり、2005年にダーガビル(オークランドから北へ約200㎞)に農地を購入し、脱サラしました。

しかし購入した土地があまりに山奥だったため、両親の強い勧めで、ダーガビルの土地にはアロエを植えることなく、もう少し都市に近い場所へと移ることにしました。次に引越したのは、オークランドの南部のパツマホエという村でした。そこは火山灰土の土地で栽培には適した土壌だったものの、残念ながら冬の長雨のせいでアロエはうまく育たず、アロエ栽培を断念しました。

そして、羊農家に転向。しかしながら、羊農家も簡単な道のりではなく、日々の激務と反比例するかのように、毎日のように調子が悪くなる羊を発見しては落ち込みました。敢え無く羊飼育を断念。さらに転向し肉牛を始めました。もちろん農業でラクな分野はひとつとしてありませんが、それでも肉牛は、ルーティンがとても多い羊や莫大な設備投資が必要な酪農に比べると、私には取り組みやすい分野でした。

 

KT:現在の牧場はどうやって見つけたのですか?

SH:ネット検索で探して実際に見に行く、ということの繰り返しで見つけました。パツマホエの牧場で3年が過ぎた頃、肉牛農家の作業にも慣れ、数字的にも一定の結果を出すことができたため、規模の拡大を考え新たな牧場探しを始めました。しかし、子どもが小さかったこともあり、「ある程度の規模の街(病院と、ある程度の規模の学校があるのが前提)から車で30分以内」という立地条件を設けて探し始めました。条件にマッチしていても、価格面で折り合いがつかなかったりとなかなか見つかりませんでしたが、粘り強く探し続け、2009年に現在のダニーバークの土地に出会うことができました。

 

KT:これからファーマーを目指す方へのアドバイスをお願いします

SH:まず、まとまった広さの土地の購入をするためには永住権を持っている必要があります。また資金面では、銀行で借りる際にかなり詳細な売り上げ計画が必要になります。借り入れる資金は、牧場購入費用だけでなく、年々価格が上昇している家畜の購入費用やフェンスなどのメインテナンス費用を見込む必要があるでしょう。

資金面で直ぐに農場購入が難しい場合は、まずは「ファームワーカー」として農場勤務の経験を積みながら、「ファームマネジャー」職を目指すという方法もあります。ファームマネジャーとは「ファームオーナー」から農場の管理を任される職種です。ファームマネジャーとして勤務できれば経験や資金を準備することが出来ると思います。そうすればゆくゆくは自分の牧場を所有、運営することも可能だと思います。

 

KT:ファーマーとしての幸せは何でしょうか?

SH:言葉の通じない動物たちに真摯に向き合うことで、心を通わせられる飼育をしていくことに喜びを感じています。また、自宅で家畜を育てたり、野菜を育てたりすることで、子どもたちが生命の大切さを自然と学べる環境があるというのは有難いことだと思います。そして、まさに“牧歌的”なこの風景の中で家族と生活ができる毎日が幸せです。

 

SHUICHI HADA:FARMER, DANNEVIRKE

 

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.95(2018年2月号)」に掲載されたものです。

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